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『DIGGER/ディガー』イニャリトゥはなぜ、映画を語る我々を笑うのか ※注!ネタバレ含みます

© 2026 WBEI and Legendary

『DIGGER/ディガー』イニャリトゥはなぜ、映画を語る我々を笑うのか ※注!ネタバレ含みます

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※本記事は物語の核心に触れているため、映画未見の方はご注意ください。


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反転する風刺の矛先



 出っ腹で薄毛の石油王を演じるトム・クルーズが、テキサス訛りでまくし立てる。予告編を観た段階で、筆者は『DIGGER/ディガー』(26)を「強欲な億万長者をコケにして笑い飛ばす映画」だと思い込んでいた。ところが実際に観てみたら、まるで違う。これは権力者を笑う映画ではなく、権力者を笑ってスッキリしたい我々・観客を笑う映画だったのである。


 アメリカの映画レビューサイトRotten Tomatoesでは、批評家の評価を示すトマトメーターが53%、一般観客のポップコーンメーターが74%と分かれた(*1、10月13日時点)。とりわけ目立つのは、一部の評論家たちの言葉の激しさ。RogerEbert.comは「この気怠く、自己満足的な映画が機能していないのは、耐えがたいほど痛ましい」(*2)とクサし、TheWrapは「邪悪な億万長者を描いた映画として最悪の部類」(*3)と断じた。


 筆者には、その苛立ちが痛いほどよくわかる。この映画は、作品を考察し、意味を掘り出し、消費するという、映画を"DIGる"行為そのものを皮肉り、しかもどんな批判も先回りして飲み込んでしまうからだ。そして、「そういうお前らだって、映画産業という巨大なシステムに乗っかってるだろ!」と、包み隠さず突きつけてくる。



『DIGGER/ディガー』© 2026 WBEI and Legendary


 物語の発端はこうだ。老齢の石油王ディガー・ロックウェル(トム・クルーズ)が、グリーンランドでの強引な採掘によって巨大な棚氷を崩落させ、コンプソン大統領(ジョン・グッドマン)と結託してその事実を隠蔽しようとする。ところが開始30分ほどで、我々が観ていたのは「Fossil Fools」という風刺劇の通し稽古だったことが判明。ディガーを演じていたのはカーティス・マークソンという俳優で、劇の権利を買い取ったプロデューサーのケニー(ジェシー・プレモンス)は、実在のディガーの甥だった。


 映画の歴史において、権力者をコケにする風刺は連綿と受け継がれてきた。『博士の異常な愛情』(64)しかり、『ドント・ルック・アップ』(21)しかり、『ザ・メニュー』(22)しかり。観客は愚かな権力者を笑い、溜飲を下げて劇場を出る。ところが『ディガー』では、途中で批判の矛先がくるりと反転する。狙われていたのは、笑っていたはずの客席のほうだった。


 劇中の観客はディガーの死に喝采を送り、防毒マスクをつけて、荒廃した街へと帰っていく。それは、いまスクリーンを観ている我々の姿にほかならない。





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