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『search/サーチ』Google出身の異才に、映画監督への夢を抱かせた一枚の写真とは?

『search/サーチ』Google出身の異才に、映画監督への夢を抱かせた一枚の写真とは?

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全シーンがPC画面上で展開する前代未聞のサスペンス



 本国公開に遅れること2ヵ月あまり、『search/サーチ』がいよいよ日本でも上陸を迎え、目下その前代未聞のストーリーテリングへの驚嘆が多くの観客の間で共有、拡散されている。筆者もこの作品を試写にて拝見したが、従来の映画の表現性が鮮やかに更新されていく様にめった打ちにされた。というのも、本作はすべてのシーンをPCの画面上で展開、完結させる特殊な構造を有しているのである。


 この試みはただ思いつくのと、実現させるのとではまるで違う。平凡な才能であれば単なる実験的な映像に終始してしまったはずだ。主演のジョン・チョーも最初にこの構想を聞かされた時には「ネット映画っぽい仕上がりになるのでは?」と極めて懐疑的だったという。




 でもいざ映画が始まれば、ものの5分で誰もが「やられた!」と感じるはず。本作の面白さときたらもう格別なのである。テキストメッセージやSNS、Facetime、パソコンに保存された写真や動画、ニュース映像などを駆使しながら、人の思考や感情の流れを観客へと伝え、ひいてはそこに繰り広げられるサスペンスフルでエモーショナルな“物語”をダイナミックな筆致で描き出していく。つまりここには、ギミックに終始しない「ストーリーの面白さ」が詰まっているのである。


 このプロジェクトを中心になって追究したのは、現在27歳のアニーシュ・チャガンティ監督と脚本・製作を務めたセヴ・オハニアン、そして製作のティムール・ベクマンベトフ(彼は『ウォンテッド』や『ナイト・ウォッチ』などのヒット作の監督でもある)。



“スクリーン・ライフ”という新たな映画言語の発見



 そもそものきっかけをもたらしたのはベクマンベトフだった。彼がある日、「今やデバイスのスクリーンは、各ユーザーの“心の写し鏡”になりえているのでは?」と気づいたところに端を発する。


 それはなにも、送信したメールやメッセージ、保存された画像、動画のアップデートなどに限ったことではない。例えば、途中まで書いて削除した文字だったり、ふと開いて確認した予定表だったり、次にどうすべきか躊躇してカーソルだけが点滅している状態だったり・・・デバイスのスクリーンには、自分でも意識しないレベルの心象模様が、まるで手に取るかのように克明に映し出されている。これは、現代人の誰もが納得できるだろう。




ベクマンベトフはこのコンセプトを“スクリーン・ライフ”と呼び、この新たな言語を用いて映画製作することを思い立つ。そこで、この分野に打ってつけと思われた若き才能チャガンティと、オハニアンに声をかけたわけである。



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