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『search/サーチ』Google出身の異才に、映画監督への夢を抱かせた一枚の写真とは?

『search/サーチ』Google出身の異才に、映画監督への夢を抱かせた一枚の写真とは?

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奇才チャガンティが長編監督デビューを果たすまで



 ここでなぜチャガンティに白羽の矢が立ったのかにも説明が必要だろう。彼は元々、多くのフィルムメーカーを輩出する南カルフォルニア大学で映画製作を学び、その頃から同級生たちに比べて抜きんでた才能を発揮していたという。指導助手だったオハニアンもその異才ぶりにいち早く目をつけていた1人だった。


 やがてオハニアンは『フルートベール駅で』(13)の共同プロデューサーとしても広く業界で知られる存在となる。一方のチャガンティは、オハニアンの読み通り、23歳の時にさっそく世界を相手に才気を爆発させた。彼は2分半のショートムービーを製作し、これがリリースから24時間で100万回以上再生される大反響を呼んだのだ。


それは”SEEDS”という作品。全編をグーグル・グラスにて撮影したこの映像は言葉で説明するよりも、実際の映像を観てもらった方が早いだろう。



 “SEEDS”を観ると、その限定的とも言えるミクロな視点の積み重ねが、いつしかえも言われぬ胸の高まりへと変貌していくダイナミズムがありありと見て取れる。


 また、この短尺ながらも壮大なロードムービーの中で、一通の封筒をまるで“マクガフィン”のように機能させているところにも、チャガンティが単なるテクノロジーの信奉者ではなく、伝統的な語り口をもしっかりと重んじる人であることを納得させられるだろう。


 この映像がきっかけとなって彼はGoogleに招かれ、クリエイティブ・ラボに所属してCM制作などに携わることになる。その期間、2年。こうして従来持ち合わせていた才能と、在職中にGoogleで培ったテクノロジーやデジタルライフを映像作品へと昇華させるスキルとが掛け合わさり、彼は唯一無二とも言える特殊な人材へと育っていったのである。新たな才能を探していたベクマンベトフが彼に声をかけたのもあらかじめ定められた運命と言えるのかもしれない。


 兎にも角にも、こうしてベクマンベトフとチャガンティ、それにこの若き才能の兄貴分ともメンターともいうべきクリエイティブ・パートナーのオハニオンが加わり、「新たな言語(スクリーン・ライフ)を用いて物語を描く」というプロジェクトが動き出したのだ。



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