© 1994 Warner Bros., Monarchy Enterprises B.V. and Regency Entertainment (USA) inc. All rights reserved.
物議を醸した『ナチュラル・ボーン・キラーズ』のクレージーな内幕を暴く!
2018.11.14
完成、公開、そしてさらに大きな混乱の余波
難局を経て完成した『NBK』は、さらなる騒動に見舞われる。またしてもタランティーノの登場だ。『パルプ・フィクション』でカンヌ映画祭グランプリを受賞し、飛ぶ鳥を落とす勢いの彼は、同作のプロモーションで訪れた国々で、『NBK』に対して悪態を突いていた。後発で世界プロモーションをすることになったストーンには大きな痛手だ。どの国のジャーナリストにも、「タランティーノさんの脚本に、いったいどんなひどいことをしたんですか?」と問われるハメになる。”フィルムメーカー同士は揉めるべからず”という哲学を持っているストーンに、後輩を悪く言うつもりはなかったが、それでも困惑しつつ、こう答えた。
「クエンティンほど急激な成功を収めたフィルムメーカーはいない。でも彼は『NBK』を見てもいない。それで批判をしているなら傲慢に他ならない」 弁の立つタランティーノは、ストーンにこう答えた。「『NBK』を見ずに批判していると言えば、少しはオリバーの顔も立てられるかな、と思ったんだ」
『ナチュラル・ボーン・キラーズ』© 1994 Warner Bros., Monarchy Enterprises B.V. and Regency Entertainment (USA) inc. All rights reserved.
1994年に『NBK』が公開されるや、案の定、物議を醸すことになった。映画宣伝にひと役買うはずのメディアは、映画のメディア批判に対して腹を立てる。評論家には「騒々しい映画」とのレッテルを貼られる。さらに悪いことに、公開後にはミッキー&マロリーを真似た模倣犯が現実の世界に出現。ストーン監督とワーナーは連続殺人を誘発したとして、訴訟に巻き込まれる。むろん映画に罪はない。2001年、米最高裁は訴えを棄却する。
『NBK』の騒動に疲れ果てたたと思いきや、ストーンはさらに『ニクソン』(95)という問題作を放つ。続く『Uターン』(97)ではショーン・ペンを主演に迎えて彼と和解。99年の『エニイ・ギブン・サンデー』では『NBK』と同様の無数のカットと楽曲を駆使して、プロアメフト会の内幕を暴いた。「映画は破壊分子となり、限界に挑む義務がある」――ブルーレイ『NBK』の音声解説の締めで、ストーンはそう語っている。心を乱さずにおかない、この衝撃作を、あなたはどう受け止めるだろう?
文:相馬学
情報誌編集を経てフリーライターに。『SCREEN』『DVD&動画配信でーた』『シネマスクエア』等の雑誌や、劇場用パンフレット、映画サイト「シネマトゥデイ」などで記事やレビューを執筆。スターチャンネル「GO!シアター」に出演中。趣味でクラブイベントを主宰。
『ナチュラル・ボーン・キラーズ』
ブルーレイ ¥2,381+税/DVD特別版 ¥1,429 +税
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