2018.11.19
リハーサルに備えてファイファーが講じた苦肉の策とは?
さて、ファイファーのパフォーマンスで最も観客を魅了したのは、真紅のイブニングに身を包んだスージーが、ピアノの上に横たわりながら名曲"Makin' Whoopee"を歌う場面だ。その撮影は1日10時間の歌唱トレーニングよりも過酷だった。ファイファーに振付が施されたのはたった1回だけで、その後、実に6時間かけてリハーサルと本番が行われたのだ。想像してみて頂きたい。舞台は固いグランドピアノの上である。そこに長時間横たわり、時々体を回転させながら歌い続けなければならないのだ。これでは体力が持たないし、第一、節々が痛くなる。そこで、ファイファーは膝と肘に分厚いパッドを装着して地獄のリハーサルを切り抜けた。観客をうっとりさせるキラーショットの影で、そんなアスリート並みの秘策が用いられていたとは!?もしかして、ファイファー・ファンの夢を無残にも打ち砕いてしまったかも知れない。
『恋のゆくえ╱ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』(C)Gladden Entertainment Corp. 1989
結果的にこのシーンは大評判となり、スージー役の候補に挙がっていたというマドンナは、後に"Blond Ambition"ツアーの中でファイファーの演技をコピーし、"Sooner or Later"をピアノの上で熱唱し、リベンジ。また、映画のパロディが数珠繋ぎになったヒット作『ホット・ショット』(91)では、『トップガン』(86)や『ランボー3╱怒りのアフガン』(88)等と並んで、パロディのネタ元に使われたりもした。因みに、その『ホット・ショット』に出演したロイド・ブリッジスは、『恋のゆくえ』でベイカー兄弟を演じたロイド・ブリッジスとジェフ・ブリッジス兄弟の実の父親。今は亡き俳優一家の長である。別に深い意味はない。そろそろタイトルロールのピアノデュオに話題を移したいだけだ。