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『恋のゆくえ╱ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』が醸し出す人生の悲哀 ミシェル・ファイファーの真骨頂

(C)Gladden Entertainment Corp. 1989

『恋のゆくえ╱ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』が醸し出す人生の悲哀 ミシェル・ファイファーの真骨頂

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『恋のゆくえ╱ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』あらすじ

なかなか人気が出ず、お呼びのかかるラウンジも格の低いところが増えてきたジャズ・ピアニスト兄弟。この状況を打破するべく美人ヴォーカリスト、スージーを雇いトリオとして再出発した。彼女の人気でトリオ次第に人気を博していくが……。



 ままならない人生と不器用に向き合う人々にカメラが優しく寄り添うとき、味わい深い映画が生まれる。この法則に則り、多くの観客に長く愛されている映画がある。『恋のゆくえ╱ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』だ。地方のホテルのラウンジで酒とおしゃべりに熱中する客の目と耳を、熟練の演奏で惹きつけようとするピアノデュオ、ベイカー兄弟の物語。しかし、近頃客離れは著しく、2人は起死回生を狙って女性ボーカルを加えることを思いつく。ところが、オーディションに現れた歌手、そして歌手もどきはどれもハズレで、もう帰ろうとしたその時、大幅に遅刻して現れたのが、見た目はセクシーで歌もいけるスージー・ダイアモンドだった。


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『グリース2』から『恋のゆくえ』までの道のり



 売れない兄弟ピアニストの救世主となるこのスージー役が、ミシェル・ファイファーにとって一世一代の当たり役になったのはご存知だろう。彼女がデブラ・ウィンガー、ジョディ・フォスター、ブルック・シルーズ等、候補に挙がっていたという、知名度では先行する人気女優たちを押し退け、役をゲットした理由は、それまでの女優キャリアを紐解けば明らかだ。ざっと並べてみよう。デビュー初期の『グリース2』(82)のつっぱりハイスクールギャル、ステファニー、『スカーフェイス』(83)でアル・パチーノ扮する成り上がり麻薬王に囲われ、夫と一緒に麻薬漬けの生活を送る妻、エルヴィラ、『眠れぬ夜のために』(85)で不眠症のジェフ・ゴールドブラムと一晩運命を共にする密輸組織の運び屋、ダイアナ、そして『愛されちゃって、マフィア』(88)で囮捜査中の青年FBI捜査官が恋に落ちるギャングの未亡人、アンジェラetc。



『恋のゆくえ╱ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』(C)Gladden Entertainment Corp. 1989


 どれもこれも、セクシーで蓮っ葉で、すれっからし。ファイファーにとっての適役は、『危険な関係』(88)で残酷なゲームの犠牲者になる淑女役などではなく、まして、コスチュームプレイでもなく、むしろどちらかと言えば、アメリカの地方の街で今を懸命に生きるシティガール役。その路線の到達点が『恋のゆくえ』のスージーだった。本人もこのオファーに手応えを感じたのか、劇中でスージーが歌う全曲を吹き替えなしでマスターするため、クランクイン2ヶ月前から、女優・歌手としても活動するヴォイストレーナー、サリー・スティーヴンスの下で発声練習を開始。1日10時間スタジオに入り、さらに録音テープを自宅に持ち帰って復習するという凄まじい努力の甲斐あって、いざカメラが回り始める頃には、ピアノ演奏のみで全曲を歌い切るまでになっていた。



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