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ジャンル映画への偏愛が、それ自身をも越境する!怪作『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』

ジャンル映画への偏愛が、それ自身をも越境する!怪作『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』


作中に散りばめられたジャンル映画への偏愛



 ニコラス・ケイジ演じるレッドの妻・マンディは画家を生業としており、ヒッピーのような風情を漂わせ、モトリー・クルーブラック・サバスといった80年代に活躍したメタルバンドのTシャツを愛用している(1983年という時代設定は、世界的なヘビィメタルブームの勃興と時期が重なる)。




 映画を彩るヨハン・ヨハンソンのスコアもディストーションをきかせた重低音のギターの音色が前面に押し出されており、冒頭で流れる「スターレス」という曲はプログレッシブ・ロックバンド、キング・クリムゾンの中で最もメタル的と評されたアルバム「RED」に収録されている曲だ。



 さらに、物語の舞台はクリスタル・レイクという湖の湖畔とされるが、これは『13日の金曜日』(80)の舞台と全く同名であり、『マッドマックス2』(81)を思わせる重武装のバイカー集団や、チェーンソーによる決闘なども登場し、古き良きSFやホラーへの愛情を隠さない。


 このような自分の趣味を作中にためらいなく登場させ、しかもそれを観客も楽しむという文化の一般化に貢献したのはタランティーノだろうが、2000年代以降になると、特にホラー系映画では、そのような映画が濫作された感がある。しかし、そうした傾向はジャンル映画の類型化(「ジャンル映画」という概念がそもそも「類型化」の別の言い方かもしれないが)も招いたのではないかと個人的には思える。近年のゾンビ映画やスプラッター映画は臆面もなく過去作へのオマージュを散りばめてみせるが、それは、作品自体が「監督が愛する映画」の再生産に堕してしまう危険と常に隣りあわせだったし、事実、単なる再生産に終わった作品も数多くある。




 しかし、一方でセンスと戦略に優れた監督たちはその危険を巧みに回避し、良作をものにしてきた。その行きつく先にあったのが『シェイプ・オブ・ウォーター』(18)のアカデミー作品賞受賞という事件だったのではないか。モンスター映画が権威あるアカデミー賞を受賞することで「大人のくせにホラーや怪獣ばかり見て(作って)」という世間からの白眼視、オタクたちが倒錯的に精神的な糧としてきた「日陰者」「マイノリティ」としての特権意識は実はかなり前から賞味期限切れだったことを、多くのものに気づかせた。つまり表現者のマジョリティは既にオタク化しており、オタク性(ジャンル映画などへの偏愛)は作家性の担保にはなり得ないということを明白にしたのだ。



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