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ジャンル映画への偏愛が、それ自身をも越境する!怪作『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』

ジャンル映画への偏愛が、それ自身をも越境する!怪作『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』


ジャンル映画の限界を突破しようとする意思



 では、『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』が凡庸なオタク意識にとらわれた映画かと言えば、それは全く違う。オタク的な意匠を散りばめながらも『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』はジャンル映画の限界を突破しようとする意識を、はっきりとスクリーンから放射している。ざらついた画質と、サイケデリックに設計された色彩、レンズに入り込む逆光など映像的に独特のセンスが光るが、特筆すべきは、作品が持つ特異なテンポ感だろう。


 前半はなかなか事件がおこらず、ともすると冗長に感じる危険もある構成、演出となっているが、コスマトス監督は幻想的な映像美と編集処理で画面から観客の注意を片時も逸らさせない。アートとジャンル映画を巧みに融合させているのだが、この感覚はありそうでいて、今まであまり見られなかったものだ(というより成功例が極端に少なかったのかもしれない)。こうした効果をもたらすことに成功したのは監督が映画のお約束や、ジャンルの類型に縛られずに作品世界を構築する姿勢を貫いたおかげだろう。




 コスマトス監督は自らの作品をナイーヴ・アート(素朴派)と表現している。ナイーヴ・アートとは体系的な芸術教育を受けてこなかった作家が独自の手法で表現した作品のこと指す。彼は『ランボー2/怒りの脱出』(85)などを監督したジョージ・P・コスマトスを父に持ち、若いころから映画製作の現場にいたため、映画作りのノウハウは体得しているが、映画を学問としては学んでこなかった。しかし、子供のころから吸収してきた映画以外のカルチャーを作品に注入することで、ジャンルを軽々と越境する映画を作り出せることを彼は証明してみせたのだ。




 『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』は自分の中に作り上げてきた「硬直した映画観」に縛られてきたオタクたちを開放する運動であると同時に、ジャンル映画を解体・開放する試みに他ならない。ギレルモ・デル・トロやエドガー・ライトといったジャンル映画の巧者たちが本作に絶賛の声を寄せていることが何よりもその証左であろう。



文:稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)など。現在、ある著名マンガ家のドキュメンタリーを企画中。



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『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』

11月10日(土)新宿シネマカリテほかにて公開

配給:ファインフィルムズ  © 2017 Mandy Films, LTD. All Rights Reserved  

公式サイト:www.finefilms.co.jp/mandy


※2018年11月記事掲載時の情報です。

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