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『ダイヤルMを廻せ!』ヒッチコックは意外にも新技術好きだった!?

『ダイヤルMを廻せ!』ヒッチコックは意外にも新技術好きだった!?


『ダイヤルMを廻せ!』の3D演出術



 プロジェクトがスタートしたばかりのころ、ヒッチコックは「Prevue Magazine」(53年6月号)のインタビューでこう答えている。「3Dで作業するには、いくつかの変更が必要になると懸念している。例えば、クローズアップは完全に無くさなければならない。大画面一杯に俳優の頭が映っていると、怪物のように見える(*9)だろうからね。しかし、一度に多くの俳優を見せるときは、3Dは非常に効果的だ。その意味で、3Dは舞台劇のようになるだろう。(中略)また、観客に水を噴きかけるようなトリックのためには効果的だ。こういったトリックを中心に映画を計画するなら、3Dは最善だといえるだろうね。実際、私はこのようにして映画を始めたいと考えている…暗い画面…音は聴こえない…すると突然、非常に長い指が喉元に伸び、観客を引きずり込んで行く…」。


 この段階のヒッチコックの3Dに対する認識は平凡で、正直言ってつまらない。だが完成した『ダイヤルMを廻せ!』の3D版を鑑賞してみると、あからさまな飛び出し感を強調した場面は、殺人を依頼されたレズゲイト(アンソニー・ドーソン)にマーゴ(グレイス・ケリー)が首を絞められ、抵抗するためにハサミに手を伸ばすシーンや、ハバード警部(ジョン・ウィリアムズ)が階段から発見した鍵を見せるシーンぐらいだと気付かされる。




 しかしごく普通の会話シーンにおいても、俳優とカメラの間に電気スタンド、花瓶、酒のボトル、グラス、ベッドのヘッドボード、アパートの門扉、カーテンといった前景となる物体を配置させたり、ドア越しに隣室の様子を見る構図を採ることで画面に奥行きを与えている。


 さらには、トニー(レイ・ミランド)がレズゲイトにマーゴの殺人計画を持ちかける場面や、レズゲイトの背中にハサミが深く刺さっていく場面、トニーがレズゲイトの死体から鍵を探す場面などでは、カメラの高さを足元ギリギリにセットして床面のパース感を狙っているし、天井からの俯瞰でシャンデリア越しに撮っている大胆なショットもある。


 これらの構図は、通常の2D作品として見るとかなり異様である。これに関してヒッチコックは、トリュフォーとの対談(4)で「立体効果を出すために、ことさら仰角やロー・アングルで撮ったものだよ。穴を掘って、キャメラマンたちはその中に入り、キャメラをいつも地面の低さにセットできるようにした」と語っている。ただし、床の穴からハサミなめで背中に刺さって行く様子を主観で捉えた残酷ショットは、さすがに削除されてしまったようである。


*9 2D映像では、モノのサイズは常に相対的つまり背景との比較によってしか表せない。背景に何もない場合、被写体がどれくらいの大きさなのかを推定することは不可能である。しかし3D映像なら、スクリーンから飛び出させることで現実世界との比較になるため、大きさを絶対的に感じ取ることができる。だが、被写体をスクリーンより過剰に飛び出させると、被写体が縮んで感じられる“箱庭効果”という現象が生じる。しかしこれの逆で、スクリーン上でのサイズはそのままでも、被写体の位置を画面の奥にすることで今度は大きく見えてくる。だが今度は現実世界との比較ではなく、映像内の他の物体との比較になるため、ヒッチコックが言うように俳優が怪物に見えることはない。(11)



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