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スタローンを復活させた『クリフハンガー』大ヒットの裏側とは

(c)Photofest / Getty Images

スタローンを復活させた『クリフハンガー』大ヒットの裏側とは

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レニー・ハーリン推しだったPR



 夏公開とメインビジュアルへ大きく書き込んでいたこともあり、慌ててポスターやチラシを回収した記憶も蘇る。新しく作ったメインビジュアルも谷底へ女性が落ちる瞬間の日本独自のデザインではあるが、スタローンの写真は申し訳ない程度に小さく使うのみで、スタローンの名前すら表記されず『ダイ・ハード 2』のレニー・ハーリン推しで展開されることに……。


 1993年10月に東京国際映画祭の特別招待枠で、1度きりの大スクリーンでの上映が決まり、レニー・ハーリン監督の来日が決定した。その上映にハーリン監督も立ち会って観るとのことで、もしかしたらスタローンも連れてきてくれるのではと、少なからず期待に胸を膨らませたのだが、なんと一緒に連れてきたのはスタローンではなくて当時ハーリン監督が交際していた女優ローラ・ダーンだった。『クリフハンガー』の仕事をしていた我々からするとこのハーリン監督の行動に疑問しか抱けなかったが、自身の彼女も来日させないと東京へは行かないなど水面下で交渉があったのだろう。


 まぁレオナルド・ディカプリオだって『タイタニック』(97)で来日する時の条件は「複数人の友人も一緒に東京へ連れて行くこと」だったわけだしね(その友人の中には、売れる前のトビー・マグワイアもいた)。筆者はハーリン監督の隣で『クリフハンガー』を観たのだが、ローラ・ダーンと終始手を繋ぎラブラブっぷりを人目も気にせず鑑賞中から展開。個人的にいけ好かない監督と勝手に認定してしまったが、上映終了後に超満員の観客からスタンディング・オベーションされ、瞳が潤んでいた姿を見てから、長髪金髪でロックシンガーっぽい見た目とは裏腹に、何気にピュアな監督なんだなと思い直し前言撤回。


 忘れもしない1993年11月16日。有楽町マリオンの日本劇場にて『クリフハンガー』の チャリティー試写会を開催した際、登山が趣味という皇太子殿下が鑑賞しにいらっしゃることとなった。早速この情報をスタローンへ伝えたところ、何とロサンゼルスから自家用ジェットでこの試写会だけのために大雪の悪天候の中緊急来日、皇太子殿下としばしご歓談することになった。スタローンが如何に親日家であるかこれでお分かりになるかと。


 緊急来日してくれたスタローンが親日家としての男気を見せてくれたにもかかわらず、スタローン色を排除した宣伝は最後までブレず徹底的に行なわれたのだが、結果的に皇太子殿下とスタローンが握手している写真などが新聞の社会面まで賑わし、日本国内だけでも40億円の大ヒットとなった。皮肉にも『クリフハンガー』は、当時日本におけるスタローン作品で最大のヒットとなったのである。



文: ジャンクハンター吉田

本名、吉田武。ゲーム&映画コラムニスト、交通ジャーナリスト。11年前の交通事故の後遺症が悪化し右足を切断後、約半年間の休養から現在職場復帰を目指しつつ、12本抱えていたレギュラーワークを3本に絞ってメンタル部分もリハビリ中なほぼ無職。2019年4月に東京都北区から区議会選挙に出馬するべく政治活動の下準備中。



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