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男二人の心の曲線を描き、あの『アラビアのロレンス』にも重なる『グリーンブック』

男二人の心の曲線を描き、あの『アラビアのロレンス』にも重なる『グリーンブック』


目を見張るほど的確なエピソードの積み重ね



 それら過去の作品と同じく、いやそれ以上に『グリーンブック』が観る者の心をつかむのは、二人の絆が育まれるエピソードの積み重ねがあまりに的確だからだ。


 タイトルの「グリーンブック」とは、1930〜60年代に、アメリカ南部を旅する黒人たちのためのガイドブックのこと。黒人が宿泊できるホテルや立ち入り可能なレストラン、ガソリンスタンドなどが記されていた。裏を返せば、「立ち入り不可」の場所がほとんどだったということ。ドクターは、有名ピアニストとしてホテルに招かれてコンサートを行いつつ、そのホテルのレストラン、さらにトイレまで「使えない」という事態も起こる。そのたびに、無頼だが正義感だけは強いトニーには、不当な差別への怒りが募っていく。差別主義者だった男の見事な「アーク」が描かれるのだ。トニーには、怒りだけではなく、孤独な人生を送ってきたドクターへの同情も湧き始める。




 一方のドクターは、旅先でのトニーの軽い犯罪を戒めたり、一流ホテルの流儀を教えたり、さらにトニーの苦手な「あること」を代わりに上手にやってあげたりと、自分とは違う世界で生きてきた相手を教育する喜びも感じていく。こうして、たがいに足りない部分を補い合う関係は、ドクターが初めてフライドチキンを食べるエピソードで、信じられない痛快さを観る者に与えることになる。


 この『グリーンブック』は、こうしてストーリーだけ書いていくとシリアスな作品のように感じられるが、じつのところコメディであり、二人が補完し合うエピソードの多くは、笑いながら楽しめるものになっている。だからこそ、2時間10分という、この手の映画にしては長めの上映時間も飽きさせることはない。同じ状況を反復させることで、新たな地平を切り開く効果など、ほぼすべてのエピソードが、主人公たちの「アーク」と一致して、観る者を心地よい旅へといざなっていく。



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