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『戦争のはらわた』巨匠サム・ペキンパーが『スーパーマン』『キングコング』のオファーを蹴ってまで本作に身を投じた理由とは?

(c) 1977 Rapid Film GMBH - Terra Filmkunst Gmbh - STUDIOCANAL FILMS Ltd

『戦争のはらわた』巨匠サム・ペキンパーが『スーパーマン』『キングコング』のオファーを蹴ってまで本作に身を投じた理由とは?

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一般的な戦争映画とは異なるペキンパー流“狂気”が凄みを放つ



 さらに本作を物語る上で欠かせないのが ペキンパーの演出によって浮かび上がる徹底した“狂気”である。


 まず冒頭のタイトルバックからして、子供達が歌うドイツ唱歌「幼いハンス」に乗せて痛烈なモノクロの記録写真が次々と映し出され、そのコントラストが観る者の心をざわつかせてやまない。


 そうやって幕をあけると、今度はペキンパーが己の人生で培った戦闘アクションが常軌を逸したスケールでぶちまけられる。300人を超えるエキストラが肉弾戦でぶつかり合い、驚くべき火薬量で織りなされる爆破シーンではいとも簡単に兵士の身体が、肉片が、細かいカット割りとスローモーションで宙を舞う。迫りくる死の恐怖と向き合い、塹壕の中で心身を喪失させながら耐え忍ぶ兵士たちの極限状態も壮絶だし、ジェームズ・コバーンの常軌を逸した“笑い声”は、上映後もなお、その感触が耳にこびりついて離れていってくれない。


 このように『戦争のはらわた』には、ペキンパーが「戦争を描く」という生涯一度きりのチャンスにおいて、持ちうるすべてを投じて描き尽くしたという凄みが満ちている。我々も頭でストーリーを理解するだけでは到底追いつかない。劇場の客席に座って、サウンドの爆風と土けむりと返り血をただひたすら浴び続ける。そのような状況を、狂気を、そのままの感度で受け取る体感ムービーとも言えるだろう。我々は本作を通じて感動や興奮を味わうよりもむしろ、自分自身、あるいは人間の本質と向き合うことになるのかもしれない。



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