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『戦争のはらわた』狂気と混沌の狭間で生まれた怪作。バイオレンスの巨匠が放つ戦争巨編には、撮影現場の過酷で生々しいリアルが詰まっていた!?
※2017年9月記事掲載時の情報です。
『戦争のはらわた』あらすじ
第二次大戦中、ドイツの敗色が見え始めた1943年、ロシア戦線。ドイツ軍の一中隊を舞台に、人間味ある伍長と冷徹な中隊長との確執、最高の名誉とされた“鉄十字章”をめぐるドロドロの人間模様を、ペキンパーが大迫力で撮り上げた大作。砲弾の飛び交う中、泥と血にまみれた人間たちが激しく殺し合う様は、歴代の戦争映画の中でも異彩を放っている。ラストの“笑い声”が強烈なインパクトを残す。
Index
バイオレンスの巨匠ペキンパーの映画術
映画好きならば誰もが一度はこの名を耳にしたことがあるだろう。が、その響きから受けるインパクトがあまりに強いため、若い人の中にはいまだ一度も作品に触れたことがない方もいるかもしれない。それは何ら恥ずかしいことではない。未見の人は、これからその破格の魅力に触れられる楽しみが待っていることを、むしろ幸運ととらえるべきだ。そして、『戦争のはらわた』デジタル・リマスター版は、あなたが覚悟を決めてペキンパーの世界へダイブする絶好の機会を提供してくれるはずである。
「バイオレンスの巨匠」、あるいは「最後の西部劇監督」とも呼ばれ、80年代に59歳という若さで亡くなるまで伝説を更新し続けてきたペキンパー。あらゆる現場で「5秒に一度は怒鳴っていた」と言われ、使えないスタッフは即座にクビ。プロデューサーとは撮影日数や予算、編集をめぐって衝突を繰り返し、たとえ業界内に悪名が知れ渡って干されても決して媚びず、自分の描きたい世界を追究すべく、常に全力を投じ続けた。
おそらくもっと賢く生きる術もあっただろう。しかし彼はその選択肢を拒否して突き進み、彼の生き抜いた道程には凄みあふれる14本の映画たちが遺された。その中でひときわ不気味な輝きを見せるのがこの『戦争のはらわた』である。ペキンパーにとって最初で最後となる戦争モノ。世の中にきな臭さが蔓延する今、我々は改めてペキンパーの意匠に触れ、この怪作から何かを感じ取るべきなのかもしれない。