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『戦争のはらわた』狂気と混沌の狭間で生まれた怪作。バイオレンスの巨匠が放つ戦争巨編には、撮影現場の過酷で生々しいリアルが詰まっていた!?

(c) 1977 Rapid Film GMBH - Terra Filmkunst Gmbh - STUDIOCANAL FILMS Ltd

『戦争のはらわた』狂気と混沌の狭間で生まれた怪作。バイオレンスの巨匠が放つ戦争巨編には、撮影現場の過酷で生々しいリアルが詰まっていた!?

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カオスの中で戦争の狂気を描ききった『地獄の黙示録』



 ところで、『戦場のはらわた』と同じ戦場の狂気を描いた作品に、フランシス・フォード・コッポラ監督作『地獄の黙示録』(79)がある。’01年にはコッポラが再編集し直した3時間20分の超大作『地獄の黙示録 特別完全版』がお目見えして話題となったが、そもそも本作の撮影もまた、「地獄」の名にふさわしいトラブルに続きだった。


 フィリピンに建てたセットは台風で吹き飛ばされ、監督と役者たちは絶えず衝突し、主演のマーティン・シーンは心臓発作を起こして生死をさまよった。この映画をめぐっては、よくコッポラが自分の頭に拳銃を突きつける現場写真が引き合いに出されるが、彼はまさにあのメンタリティを地でいくほどの極限状態に追い込まれていたということなのだろう。


 そういったとてつもない状況を経て誕生した作品だからこそ、撮影現場のカオスは映画の内部にとてつもなく不気味な空気として封じ込められており、この傑作の封印を解くたびに我々はその香りに魅せられ、無意識のうちにジャングルの大河をひたすら従順に遡っていく自分に気づかされるのである。いざなわれる先に待つのは、果たして生か死か。それともその範疇を超えた狂気の世界だろうか。


 ペキンパーの『戦争のはらわた』とコッポラの『地獄の黙示録』は、共に70年代の終わりのほぼ同時期に産み落とされた作品である。これほど混沌かつ途方もなくリスキーな映画作りが許容されることは時代の流れから見てもう二度とないのかもしれない。いずれの作品も過酷だ。観る者を精神的に疲弊させる。が、そこまで心身を酷使するに値する映像体験だ。未見の方はぜひこの機会に身を投じ、何よりもこれらの映画を観て己が何を感じるのか、しかと向き合ってみてほしい。



参考)

「サム・ペキンパー」(ガーナ・シモンズ著/遠藤壽美子、鈴木玲子訳/河出書房新社/1998)

「『地獄の黙示録』撮影全記録」(エレノア・コッポラ著/岡山徹訳/小学館文庫/2002



文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。 



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(c) 1977 Rapid Film GMBH - Terra Filmkunst Gmbh - STUDIOCANAL FILMS Ltd


※2017年9月記事掲載時の情報です。

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