2019.06.20
愛すべきエイリアンたちの百花繚乱状態
面白がられたのは人間のキャラクターだけではない。なんといっても、エイリアンたちの個性的なキャラが光っていた。エイリアン造形を手がけたのは、特殊メイクアップの巨匠リック・ベイカー。彼もまたモンスターの種類が少ないという理由で当初の脚本には満足していなかったが、人種のるつぼ、ニューヨークを舞台に変えたことにより、登場するエイリアンも増えて、活躍の場が一気に広がった。
ベイカーのお気に入りは、冒頭に登場する不法移民のフリをしたエイリアン、マイキー。着ぐるみのアクターが扮したこのキャラは以後の出番はないが、ベイカーはマイキーでスピンオフ作品を作りたいと思ったほどの熱の入れようだったという。
『メン・イン・ブラック』(c)Photofest / Getty Images
一方のソネンフェルド監督が入れ込んだのは、老宝石商人の脳の中に潜み、人間の体を操っているエイリアン、チャッキー。宝石商の頭部が解剖された際、それは生身の姿を現わす。劇中では小型に見えるチャッキーだが、ベイカーの作った模型は約3メートルの大きさで、コンピューター制御で動くそのモーションが、脳に組み込まれたという。この他、多くのエイリアンは、ベイカー作のパペットがメインとして用いられ、CGは主に、その表情をつくることに使用された。
演技によってエイリアンのキャラに命を吹き込んだ役者もいる。悪役のエイリアン、バグに肉体を乗っ取られた農夫エドガーにふんしたヴィンセント・ドノフリオ。『フルメタル・ジャケット』(87)で狂気に満ちた演技を披露しで強烈な印象をあたえた彼は、ここでもバグのクレイジーな個性を印象的に体現。『博士の異常な愛情』(64)のピーター・セラーズの演技にヒントを得て、エイリアンに乗っ取られた人間の動きをユーモラスに演じて見せた。