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『タッカー』夢に挑む男たち、フランシス・フォード・コッポラとプレストン・トマス・タッカー

『タッカー』夢に挑む男たち、フランシス・フォード・コッポラとプレストン・トマス・タッカー

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家族の絆を意識したキャストやスタッフ



 車をめぐる大手企業と独立系企業の闘いが語られる作品だが、一方、家族の絆も描かれていく。この映画のテーマについて、コッポラ自身は前述の「American Film」の中でこんな風に言っている。


 「この映画の中には、私自身が特に惹かれるふたつのテーマが入っていた。ひとつは一緒に暮らす夫婦の愛情あふれる生活ぶり。結婚生活はすばらしいということが描かれているが、これは現代の視点からすると、少し違うのかもしれない。そして、家族が助けてくれて、いつも寄り添っている」


 そんな家族の親密さを演出するため、キャストやスタッフにも、その人の親族が選ばれている。主役のタッカーに扮しているのは、息の長い男優として今も活躍しているジェフ・ブリッジズ(09年に『クレイジー・ハート』ではオスカー受賞)。楽観的で明るい笑顔を絶やさない主人公を好演していて、コッポラ自身も「温かさや遊びのセンス、人をひきつける魅力のある彼は最高のパートナーだった」と絶賛する。そして、彼の父親ロイド・ブリッジズも出演して、タッカーと敵対関係になる政治家を演じている。




 また、タッカーを助けるビジネスマン、エイブ役を演じて、オスカー候補となったのがマーティン・ランドー(94年に『エド・ウッド』で見事に同賞受賞)。彼の娘、スーザン・ランドーは、この映画のパブリシストのひとりだったという。また、タッカーの孫娘のシンシア・タッカーも製作会社の宣伝補佐を務めている。


 さらにこの映画を再見して驚いたのが、人気監督に成長したコッポラの娘、ソフィア・コッポラもワンシーンだけ出演していたこと(まばたきをしていると見逃すほど短い出番)。さらにコッポラ夫人で、映画の監督でもあるエレノア・コッポラも顔を見せている。また、これまでコッポラの作品にたびたび参加してきた父、カーマイン・コッポラの曲も劇中に登場。まさにコッポラ家、全員集合!


 俳優も『地獄の黙示録』、『ワン・フロム・ザ・ハート』などで組んだ“コッポラ一家”のひとり、フレドリック・フォレストが車の技師役で出演していて地味ながらも存在感を見せる。また、『友よ、風に抱かれて』(87)にも顔を見せたイライアス・コティーズが車のデザイナー役でいい味を出している(後にデイヴィッド・クロネンバーグ監督の『クラッシュ』で強烈な演技を見せた男優だ)。いろいろな意味でファミリーがキーワードなっている。


 ただ、実は悲しい家族の記憶も含まれている。この映画が公開される2年前(86年)に、コッポラの長男、ジャン=カルロ・コッポラは22歳の若さでボート事故のため他界。生前、彼はコッポラが所有するタッカーの車を楽しそうに洗っていたという。この映画はそんな車好きの息子に捧げられているが、もしかすると監督は、若きクリスチャン・スレイター演じるタッカーの息子に、亡くなったジャン=カルロを重ねていたのかもしれない。



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