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『タッカー』夢に挑む男たち、フランシス・フォード・コッポラとプレストン・トマス・タッカー

『タッカー』夢に挑む男たち、フランシス・フォード・コッポラとプレストン・トマス・タッカー

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ストラーロの華麗な映像、ジョー・ジャクソンの軽快な音楽



 映画通をうならせるのは40年代のアメリカの風景をとらえた美しい映像だろう。撮影を担当しているのは『ラストエンペラー』(87)などベルナルド・ベルトルッチ監督との仕事で知られる伝説のイタリアの撮影監督、ヴィットリオ・ストラーロ。


 コッポラ監督とは『地獄の黙示録』『ワン・フロム・ザ・ハート』などでも組んでいる。監督によれば、『タッカー』の撮影意図は「40年代のアメリカの、雑誌のグラビアや広告を意識した構図」だったという。タッカー自身は当時の広告を巧みに使い、車の知名度を上げていったといわれるが、そんな彼の営業方針を意識して、この映画の撮影も華やかで、グラマラスな当時の広告のようなビジュアルになっている。


 また、本来なら分割画面で撮るべきシーン(たとえば、別の場所で電話をかけている人物たちの映像)を同じ場所で撮影することで、不思議な効果も発揮しているが、これはあえて40年代のハリウッド映画を意識した作りだそうだ。

 



 かつて「月刊イメージフォーラム」(89年1月号)に掲載されたストラーロ自身の来日インタビューによれば、撮影監督はタッカー自身の人生を4つに分けて考え、それぞれの人生における色調を考慮したという。


 事業を始める前の第一段階では素朴で色に満ちた映像、事業を始める第二段階では暖色系を使って事業を始める主人公のエネルギーを見せようとした。しかし、そのエネルギーは大手企業によって抑圧されていくので、第三段階では水のイメージを意識(火を消すもの、として)。タッカーを檻の中に閉じ込めようとする心理効果を狙ったという。第四段階では夢の車が完成するので、車のプロモーション・フィルムを意識し、寒色系の緑や青などを使って、光と影の単純なハーモニーを映像に求めたという。


 理論家の撮影監督として知られるストラーロの入念なプランがあってこそ、この映画の華麗な映像は生まれていった(タッカーが伝説の実業家、ハワード・ヒューズと会う場面のモノクロ風の映像など、その不気味で壮大な構図に息をのむ)。


 また、40年代の雰囲気を盛り上げる音楽も、この映画の大きな魅力になっている。音楽を担当しているのは、ロック畑のジョー・ジャクソンだが、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージックで音楽教育を受けている彼は、ソリッドなロックも、都会派サウンドも、軽快なジャズも、クラシック音楽も生み出すことのできる多彩なアーティスト。


 コッポラがジャクソンを起用したのは、「ジャンピン・ジャイヴ」という彼の81年のアルバムが気に入ったからだという。このアルバムで、ジャクソンはキャブ・キャロウェイやルイ・ジョーダンなど、ジャイヴ・ミュージックと呼ばれるジャズを現代によみがえらせて評価された。




 「タッカー」の粋なサウンドトラックは、その姉妹編ともいうべきアルバムになっていて、ジャクソンの少しひねりのあるジャズ・サウンドが楽しめる。コッポラ自身も、この映画での彼の音楽を絶賛している。


 劇中、何度か流れるスタンダード・ナンバー「タイガー・ラグ(ホールド・ザット・タイガー)」は1917年に作られた曲で、タッカーのお気に入りの曲。劇中ではジョー・ジャクソン版とミルス・ブラザーズ版が流れる。タッカー本人がよく口ずさんでいた曲で、タッカー社の車のエンブレムも、タイガーのデザインとなっている。



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