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『リオ・ブラボー』タランティーノも絶賛する、エンターテインメント西部劇の決定版!
突出した娯楽性がマカロニ・ウェスタンを生んだ
この後、主演のジョン・ウェインは、メキシコ軍とテキサスをメキシコから独立させようとするアメリカ市民の軍との死闘を、史実を基に描いた『アラモ』(60)を監督として完成させることになる。その劇中で流れるのが、アラモ砦に攻め入る前にメキシコ軍が実際に演奏したという、スペイン語で“打ち首”を意味する曲のアレンジ版「皆殺しの歌」であった。『アラモ』における「皆殺しの歌」は、じつは『リオ・ブラボー』からの流用である。本作でもやはり、保安官事務所に立てこもったチャンスたちに宣戦布告をする意味で、「皆殺しの歌」が演奏されるのだ。つまり本作は、多勢に無勢の戦いを、史実にあるアラモ砦の攻防に見立てているのである。
大勢の敵に囲まれ、孤立無援のチャンスたち4名。彼らは死をすぐそばに感じながら、『赤い河』でも使われた曲のアレンジ「ライフルと愛馬」、作者不肖の古い名曲「シンディ」を楽しく口ずさみ対抗する。ここで、保安官を助ける面々に、歌手のディーン・マーティンとロックミュージシャンのリッキー・ネルソンが配役されている意味がある。一緒に愉快な歌声を披露する、名脇役のウォルター・ブレナンの演技も素晴らしく、彼らが楽しく歌う様子を、ジョン・ウェイン演じるチャンスは、マグカップを手にニコニコと見ているのみ。この味のある歌唱シーンは、西部劇映画のなかでも断トツに素晴らしい雰囲気を持っている。
『リオ・ブラボー』(c) 2019 Warner Bros.Entertainment Inc. All Rights Reserved.
おおらかな雰囲気と楽しい歌、たゆまぬユーモア。そう、『真昼の決闘』が西部劇というジャンルに反逆する映画であるなら、『リオ・ブラボー』は気のいい愉快な世界を描ききることで、西部劇本来の素晴らしさを見せつけ、娯楽性を極度に強調する、典型的でありながら特別な作品になったのだ。ジャンルとしての魅力の解体と再構築……、それは西部劇におけるポストモダン的な取り組みだったといえよう。本作はイタリアで大ヒットし、イタリア製西部劇マカロニ(スパゲティ)・ウェスタンの発生に大きな影響を与えたといわれる。