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『ブギーナイツ』今だからこそ見るべき、鬼才ポール・トーマス・アンダーソンの出世作にして最高傑作

(c)1997 New Line Productions, Inc. All rights reserved.

『ブギーナイツ』今だからこそ見るべき、鬼才ポール・トーマス・アンダーソンの出世作にして最高傑作

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ポルノスターを演じるはずだった、あの人気俳優



 まずは主人公エディのキャラクターの面白さを紐解いてみよう。『ブギーナイツ』はフィクションだが、さまざまな実話をヒントにしている。たとえば、エディのモデルとなったのは実在のポルノ男優ジョン・C・ホームズ。並外れたサイズの男性器を武器にしてスターとなり、探偵アクション風のポルノ・シリーズにも主演、コカイン中毒となり犯罪にも手を染める……そんな経歴はエディの物語にそのまま取り入れられた。


 ごく普通の17歳の少年だったエディの自室に貼られたポスターやピンナップからは、1977年の時代性が見えてくる。人気女優ファラ・フォーセット、不世出の武術アクター、ブルース・リー、『セルピコ』(73)のアル・パチーノ、スーパーカーなどなど。それらは、当時の少年の夢であった。エディは、これらの“夢”を次々とかなえていく。美女との仕事、カンフーを取り入れたアクション演技、そして高価なスーパーカーの購入……彼は成功者となったのだ。



『ブギーナイツ』(c)1997 New Line Productions, Inc. All rights reserved.


 エディのドラマのもうひとつのモデルと言えるのが、1977年製作のヒット作『サタデー・ナイト・フィーバー』だ。ジョン・トラボルタが演じた、この映画の主人公の部屋には、やはりブルース・リーやパチーノのポスターが貼られている。ディスコ・ダンスで優勝する場面は、エディがポルノ業界の最高の賞を受賞する姿と重なり、その後の転落、再生も本作と被る。若いから成功するとイイ気になる。そして失敗する。ミジメな気持ちになる。それでも生きていこうとする姿に観客は希望を見るのだ。


 エディ役は当初、レオナルド・ディカプリオが予定されていた。が、彼は『タイタニック』(97)の出演を選択して降板。代わって起用されたのがマーク・ウォールバーグだ。ラッパーから俳優に転身し、本作で成功をつかんでスターの座に。『ディパーテッド』(06)『テッド』(12)『トランスフォーマー ロストエイジ』(14)など、話題作に次々と出演した以後の活躍ぶりはご存じのとおり。しかし、近年ウォールバーグは作品のクオリティを認めつつも、本作に出演したことを後悔していると語っている。今や彼は4児の父親で、敬虔なカトリック信者。過去にポルノスターを演じたことが、家族にあたえる影響を心配しているという。逆にディカプリオは、本作をオファーを断って後悔した映画の筆頭に挙げているのだから、スターの歩みもさまざまだ。



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