2019.07.27
過渡期を生きたあらゆる映画人へ向けたラブレター
おそらくこの街は、主人公のリック・ダルトンのような栄光と挫折を、星の数ほど見つめてきたのだろう。だが運命の神様は決して意地悪ではない。少なくともタランティーノの手のひらの上では勝者や敗者など存在せず、彼は映画に携わるあらゆる人たちの人生をしっかりと抱きしめてみせる。その意味でも、本作は過去を懐古したり追悼する墓標ではなく、今なお愛し続ける文字通りのラブレターなのである。
かつて6歳の少年がこの街で精一杯に吸収したものは、やがて根となり幹となって、いつしか『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』という極彩色の花を咲かせた。それは映画への愛情が溢れ出す2時間41分。我々はここに刻まれた記憶の結晶を一度ならず、何度でも味わい尽くすべきだろう。本作はそれに値する傑作なのだ。
1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
2019年8月30日(金) 全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
全米公開: 7月26日 日本公開: 8月30日
公式サイト: http://www.onceinhollywood.jp/
※2019年7月記事掲載時の情報です。