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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』タランティーノが万感の想いで描く、映画界の激変期“1969年”へのラブレター

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』タランティーノが万感の想いで描く、映画界の激変期“1969年”へのラブレター


もう一人の主人公、シャロン・テートをどう描くか



 もう一点、本作を語る上で欠かせない要素がある。そもそもタランティーノ作品は、ジャンルの掛け合わせにさらなるひねりを加え、予想を超えた化学変化を巻き起こすことで知られるが、とりわけ本作で“ひねり”となるのが、リックの隣に住む女優シャロン・テートである。彼女の夫は『ローズマリーの赤ちゃん』(68)で一躍売れっ子監督となったロマン・ポランスキー。リックたちとは真逆で、まさに新時代の上昇気流に乗ったカップルである。


 さらに本作には、この町の外れで集団生活を送る“マンソン・ファミリー”の存在もチラついている。


 この両者の組み合わせで、なおかつ「1969年8月9日」といえば、導き出されるものはひとつだけ。映画ファンにはおなじみの“あの事件”しかない。これこそ筆者の胸の中でずっと警戒アラームが鳴り続けた理由である。果たして物語の行き着く先、そこでは何が起こるのかと誰もが気を揉むところだろうが、こればかりは周囲がネタバレせぬうちに、いち早く映画館で見届けて、と言うしかない。




 ちなみに、マーゴット・ロビー演じるシャロンは、夫婦で数々のパーティに顔を見せて脚光を浴びたり、一方で夫に『テス』の原作小説を紹介して映画化のきっかけをもたらしたことでも名高い。(それゆえ79年に製作されたポランスキーの代表作『テス』は、「For  Sharon」という言葉から始まる)。


 また、映画の中盤にシャロンが自ら映画館へ赴き、自身の出演作を鑑賞する場面があるのだが、ここで映し出されるのは『サイレンサー 破壊部隊』(The Wrecking Crew)というB級スパイムービー。“カラテ・アドバイザー”としてブルース・リーが参加した本作を一般客に混じって楽しむシャロンの、なんと表情豊かで魅力的なことか。映画史において何かと悲劇的な文脈で語られてきた彼女を、あえて等身大のサイズで活き活きと捉えようとするタランティーノの心意気と愛情がひしひしと伝わってくるではないか。



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