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『ALI アリ』チャンプ / モハメド・アリを描きあげた、ウィル・スミス、マイケル・マン、エマニュエル・ルベツキという最強布陣

(c)Photofest / Getty Images

『ALI アリ』チャンプ / モハメド・アリを描きあげた、ウィル・スミス、マイケル・マン、エマニュエル・ルベツキという最強布陣

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カリスマ2人の化学反応



 本作の製作発表時、ウィル・スミスがモハメド・アリ役に決定したというニュースが広まると、批判的な意見が多く出て話題となった。当時のウィル・スミスは、軽快でコミカルな役柄を得意とし、俳優になる前のラッパーとしても、同じくコミカルな印象しかなく、体つきも華奢で、ヘビー級のモハメド・アリ役が務まるとは到底思えなかったからだ。また、モハメド・アリは強烈な個性を持った唯一無二なボクサーゆえ、そもそも誰もモハメド・アリを演じることは出来ないと思われていた。


 モハメド・アリに関しては多くの映画作品が存在する。私が知る限りでは20作近くあるが、その大半がドキュメンタリー映画である。その中には日本で勝新太郎が製作した『モハメッド・アリ 黒い魂』(74)や、アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞に輝いた『モハメド・アリ かけがえのない日々』(96)という名作まで存在する。


 本作のように、モハメド・アリの人生がドラマ化された『アリ/ザ・グレーテスト』(77)という作品も存在し、『スター・ウォーズ』(77)でダースベイダーの声を演じたジェームズ・アール・ジョーンズや、『ポセイドン・アドベンチャー』(72)のアーネスト・ボーグナインなど、名優たちが出演している。この豪華キャスティングの中、モハメド・アリを演じているのは、なんとモハメド・アリ本人なのだ。批評家からも好評だったモハメド・アリの意外な名演技は、まるでモハメド・アリを演じられる役者は、本人以外この世にいないと証明しているかのようだった。


『アリ/ザ・グレーテスト』予告


 だがそこに現れたのが、ウィル・スミスだった。体重を16kgも増やし、1年掛けてボクシングのトレーニングを行い、声を真似るためにボイストレーニングまで受けた。リアリティを追求した撮影では、実際に殴られることも厭わなかった。ウィル・スミスは確実に、ボクサーのモハメド・アリになっていった。そして私たちが見る前に批判的だった「軽快でコミカル」なウィル・スミスこそが、実はモハメド・アリそのものだったのだ。


 「アリ・ラップ」と称させる、モハメド・アリの滑らかで多弁な語り口を演じられたのは、軽快な曲でラップをしていたウィル・スミスならではだろう。そして彼は、モハメド・アリと同じくらい圧倒的な天性のオーラとカリスマ性を持っていた。二人とも、人を惹きつけるパワーを持っており、群衆から「チャンプ」と呼ばれるに相応しいキャラクターなのだ。



『ALI アリ』(c)Photofest / Getty Images


 先日公開されたばかりの『アラジン』(19)でも、公開前はウィル・スミスがジーニーを演じることへの批判が集まったが、公開後はウィル・スミスの圧倒的な存在感に評価が高まった。ウィル・スミスとは批判を好転できる俳優なのだ。


 撮影時、モハメド・アリは積極的に現場に出かけ、ウィル・スミスとともに時間を過ごし、役作りへのアシストをしている。結果、ウィル・スミスは本作で初めて、アカデミー主演男優賞にノミネートされた。



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