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コンプトンへようこそ!『ストレイト・アウタ・コンプトン』が鳴らす警告とは

(C) 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

コンプトンへようこそ!『ストレイト・アウタ・コンプトン』が鳴らす警告とは


『ストレイト・アウタ・コンプトン』の存在意義



 映画と同タイトルの曲「ストレイト・アウタ・コンプトン」の冒頭「お前ら、これからストリートの知識の凄さを目撃することになる」の言葉で本作は始まる。彼らがコンプトンから飛び出して伝えたかったもの、それはコンプトンで起きている内情だった。インタビューでアイス・キューブはこう答えている。「黒人社会全体から見れば、わずかな数とは言え、銃を持たずにはいられない子供というのが確実に存在する、ということだ。その事実を見据えろというのが俺のラップだ。人が眼の当たりにしたくない事実を明るみに出すと、いろんな形で抑圧されてしまう」。


 「ストレイト・アウタ・コンプトン」の曲の中では、イージー・Eがこう語っている、「これは俺の自伝だ」と。本作は、彼らのラップの内容をより分かりやすくした物語である。マスコミが伝えようとしない「コンプトン」という存在を彼らのラップは明らかにした。



(C) 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.


 私が初めてN.W.AのCDを手に取ったのは高校時代で、その瞬間を今でも覚えている。学校で習う英語とは全く違う歌詞を、私はさっぱり理解できなかった。けれど、言葉の節々に何かに怒っていることは伝わってきて、それを知りたいと思った。彼らの英語や背景やメッセージを理解出来るまで、私は20年以上の歳月を費やしてしまった。しかし、本作は観客が知りたいと思ったことを瞬時に丁寧に伝え、そして世界に広めている。もちろん、女性に対する歌詞や本作の女性描写は、今でも賛同できない。アイス・キューブは常々「俺はロールモデルでない」とラップしている。それでも、知りたいという気持ちを芽生えさせたのが、N.W.Aだ。本作を見ながら、N.W.AのCDを手に取った時の気持ちが甦ってきた。


 N.W.Aがデビューして25年以上経った2015年のタイミングで、なぜ自伝映画が作られたのか? そこに大切な意味がある。もちろん、アイス・キューブやドクター・ドレという個々の大成功があって、観客の興味を引くからという理由も大きいだろう。だが、ニュースを見れば未だN.W.Aがコンプトンにいた頃と大して変わらない。アメリカ国内では相変わらず人種が対立し、警察は人種によって対応を区別し、無実な人々が命を落としている。



(C) 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.


 全米でテレビ放映されたN.W.Aのドキュメンタリー映画『N.W.A: The World's Most Dangerous Group』(08:日本未公開)の中で、南カリフォルニア大学の教授トッド・ボイドがこんなことを言っていた。「N.W.Aのラップのお陰で、市民たちにくすぶっていた怒りを明らかにして警告したのに、政府はそれを見過ごした。その結果が92年の暴動なのだ」。だから彼らはまた2015年に警告を鳴らした。しかし、2019年の今もそれは見過ごされているようだ。




文:杏レラト<あんずれらと>

雑誌「映画秘宝」(洋泉社)を中心に執筆。著書『ブラックムービー ガイド』(スモール出版)が発売中。



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作品情報を見る




『ストレイト・アウタ・コンプトン』

価格:1,886円+税

発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

(C) 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

※ 2019年月の情報です。

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