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コンプトンへようこそ!『ストレイト・アウタ・コンプトン』が鳴らす警告

(C) 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

コンプトンへようこそ!『ストレイト・アウタ・コンプトン』が鳴らす警告

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『ストレイト・アウタ・コンプトン』あらすじ

1986年。最も危険な街、カリフォルニア州コンプトン。イージー・Eはドラッグ業で生活をしていたが、ある日ヒップホップカルチャーに未来を見出し、音楽ビジネスを始める。そして彼はDJのドクター・ドレー、ラッパーのアイス・キューブたちとストリート発のラップグループ「N.W.A」を結成する。一躍スターダムにのし上がった彼らだが、理不尽な権力の暴力により弾圧される。しかし、彼らは音と言葉を武器に権力に立ち向うのだった。


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コンプトンという都市



 コンプトンは、カリフォルニア州ロサンゼルスにある人口約97,000人が住む都市である。街の入り口には「ウェルカム」という看板が立っているが、こちらとしては正直ウエルカムされたくない街だったりする。というのも、クリップスやブラッズというギャングたちがブロック(一区画)ごとに存在し、犯罪が蔓延しているからだ。


 しかし、そういったイメージは、マスコミによって植え付けられたところも大きい。コンプトンに生まれ育ち、成功した人たちが多いのも事実だが、そのような良いイメージは逆に報道されにくい。なぜアフリカ系アメリカ人がコンプトンという街で生活しているのか? そこには、アメリカの歴史が関係してくる。



『ストレイト・アウタ・コンプトン』(C) 2015 Universal Studios. All Rights Reserved.


 アフリカ系アメリカ人は、1619年にアフリカから奴隷としてアメリカに連れてこられ、主にアメリカ南部の農作業の労働者として使われてきた。その後、1910年代以降に、南部にいた黒人たちが自動車産業が発展していたデトロイトやシカゴなどの北中西部、そして大企業や工場があったロサンゼルスを含む西部に仕事先を求めて移住する「グレート・マイグレーション(大移動)」が活発化する。


 そうして、ロサンゼルスもアフリカ系アメリカ人が増えていったが、彼らが住めるのは一部の地域と街だけで、人種によって住居を区別するという差別が起きていた。元々コンプトンには日系人も多く住んでいたが、第2次世界大戦勃発と共に日系収容所に入れられたため、空き家が増加。そこを埋めるために家賃が安くなり、アフリカ系アメリカ人が増えていったのだ。


 そのように住居を区別し、一か所に集めると、体制側はコントロールがしやすくなる。教育や施設を与えないので、彼らはまともな仕事には就けず、やる気を削がれ、ドラッグが蔓延していく。そのドラッグを巡る利益のため、ギャングたちが殺し合う。そんな状況を嫌といってもいいほど見てきたのが、本作の主役となるN.W.Aというラップグループである。彼らは自分たちの声を武器にして内情を伝えようと、コンプトンからやってきた。


 N.W.Aは、ドクター・ドレー、イージー・E、アイス・キューブ、DJ・イェラ、MC・レン、そしてアラビアン・プリンスの6人で結成されたが、アラビアン・プリンスは早々に脱退しているので、本作では彼を除いた5人が描かれている。1986年に結成したN.W.Aのアルバムは、コンピレーションアルバムを含めて、たったの4枚のみである(ベスト盤除く)。それでもこのように、結成から25年以上経っているにも関わらず、映画が製作されるほどの影響を社会に残したのだ。



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