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『ノッティングヒルの恋人』90年代を代表するロマンティック・コメディが、現在に与える影響とは

(C) 1999 Universal Studios. All Rights Reserved.

『ノッティングヒルの恋人』90年代を代表するロマンティック・コメディが、現在に与える影響とは

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『ローマの休日』の変奏



 『ノッティングヒルの恋人』は、永遠の都ローマを訪れたオードリー・ヘプバーン扮する某国の王女が、グレゴリー・ペック扮する米国人新聞記者と恋に落ちる、ウィリアム・ワイラーの名作『ローマの休日』(53)へオマージュを捧げた作品だとも評される。確かに両作とも、旅行に来たセレブリティと一般人の国際恋愛を主題とし、彼らのロマンスが周囲からの期待や影響によって試される点、そして記者会見がクライマックスの舞台として用意されていることなど、共通項を有している。


 実際、ロバーツのエージェントは脚本を読んだときに『ローマの休日』への素晴らしい賛辞だと感じたという。しかし、カーティスは、アナ・スコットをグレース・ケリーとオードリー・ヘプバーンのハイブリッドとしてかねてより構想していたと明かしているものの、その当時は『ローマの休日』をまだ見たことがなかったとも述べている。


 その真偽は定かではないが、『ノッティングヒルの恋人』には、『ローマの休日』を下敷きにしつつ、それを楽観主義的なロマンティック・コメディの方法で裏返してみせたかのような趣がある。最後には真の愛が障壁に勝つという、魔法のようなハッピー・エンディングに生まれ変わらせたのだ。あるいは、悲恋の物語をおとぎ話のようなロマンスへと昇華させた書き換えは、今ならファン・フィクション的な愉しみとも通じるのかもしれない。



(C) 1999 Universal Studios. All Rights Reserved.  


 「忘れないで。私だって好きな人の前では愛されたいと願うただの女なのよ」──諦念のタッカーの心を引き戻すために、アナが纏っているものを脱ぎ捨てこのように吐露するからこそ、『ノッティングヒルの恋人』は『ローマの休日』とは異なる結末に向かうのだろう。このときに彼女が着用している服──水色のカーディガン、青いスカート、ビーチサンダル──は、実はその日の朝に現場にやって来たロバーツ自身が着ていたものだ。それは、セレブではなくひとりの「普通」の人として、アナがウィリアムの前に立つその場面のために用意されていた「コスチューム」が気に入らなかった彼女の提案だったという。


 さらに、本作では、実際にハリウッドでも最も出演料の高いと噂される人気女優であるジュリア・ロバーツが、彼女自身に似た女優役=偽ジュリア・ロバーツを演じる一風変わったメタプロット的な構造も有している。たとえば劇中、有名人であるアナのことを知らない友人バーニー(ヒュー・ボネヴィル)が、最近の彼女の出演作のギャランティを尋ねると、1,500万ドルと答える場面がある。脚本では1,000万ドルと記載されていたため、ロバーツは最初はそのまま言ったが、次のテイクでは1,200万ドル、3テイク目では1,500万ドルと、自発的に彼女がその額を増やしていったという逸話がある。それは彼女自身が実際に得た出演料だと言われる(1,350万ドルの説もある)が、どうやらロバーツは映画を観た観客から過小評価されることを嫌ったようだ(彼女は続く『プリティ・ブライド』(99)では1,600万ドル、『エリン・ブロコビッチ』(00)では2,000万ドルの出演料を得たとされる)。



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 ほかにもアナの夫役の候補がどれも彼女より20歳以上年上の人ばかりだったことにもロバーツは不満を述べ、カーティスはそのように企図していたことを恥じたと振り返っている。このようなロバーツの態度は、男女の不平等の是正に取り組むフェミニズム的な意識の表れだったとも考えられるだろう。思えば、後に『オーシャンズ12』(04)でも彼女は劇中でハリウッド女優「ジュリア・ロバーツ」自身に偽装するというメタ演出が施されていたが、そのようなギャグが成立するのも、90年代後半から2000年代前半にかけて、ロバーツがハリウッド有数のトップ女優だったことを証明している。



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