『アウト・オブ・サイト』スティーヴン・ソダーバーグのキャリアを救った、エルモア・レナード原作の犯罪コメディ

『アウト・オブ・サイト』が映画業界に残したもの

　完成した『アウト・オブ・サイト』は批評家に絶賛をもって迎えられたが、興行的には大ヒットとはならなかった。ただし、全米批評家協会賞では作品賞、監督賞、脚本賞（スコット・フランク）の三冠、ボストン批評家協会賞では作品賞と脚本賞を獲得するなど幾多の映画賞を獲得（アカデミー賞では脚色賞と編集賞にノミネート）アートかぶれの問題児から業界の再注目監督へとソダーバーグの扱いは激変した。

　製作元のジャージー・フィルムズもソダーバーグの仕事には大満足だったようで、再びソダーバーグと組んだ『エリン・ブロコビッチ』（00）が大ヒット。その年のアカデミー賞では、同じくソダーバーグが監督した『トラフィック』（00）と『エリン・ブロコビッチ』の二本が作品賞と監督賞に同時ノミネートされる偉業を成し遂げ、ソダーバーグは『トラフィック』で監督賞に、そして『エリン・ブロコビッチ』からはジュリア・ロバーツが主演女優賞に輝いた。ついにソダーバーグの時代がやってきたのだ。

　先に書いたように、『アウト・オブ・サイト』の主演はソダーバーグの参加以前からジョージ・クルーニーに決まっていた。しかし二人はたちまち意気投合し、2000年に共同で映画製作会社「セクション・エイト」を設立する（06年に解散）。セクション・エイトは、ソダーバーグと監督デビューも果たしたクルーニーの活動拠点になっただけでなく、クリストファー・ノーランや『アベンジャーズ／エンドゲーム』（19）のルッソ兄弟をサポートするなど、映画業界の人材育成という点でもめざましい成果を上げた。これも『アウト・オブ・サイト』が残した功績のひとつと言える。

　冒頭にも述べたように、『アウト・オブ・サイト』はソダーバーグのキャリアを救った。そして勢いに乗ったソダーバーグとその一派は、業界の流れを変えるくらいに大きな影響を2000年代以降のハリウッドに与えることになるのだが、それはまた別の物語なるので、一旦ここで、この原稿は終えたいと思う。

文： 村山章

1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。

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作品情報を見る

『アウト・オブ・サイト』  

Blu-ray: 1,886 円＋税／DVD: 1,429 円＋税

発売元：NBCユニバーサル・エンターテイメント

Fim (C) 1998 Universal Studios. All Rights Reserved.

※ 2019 年9月の情報です。