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『パルプ・フィクション』低予算製作でスターたちを動かした真の奇跡とは?

(c)Photofest / Getty Images

『パルプ・フィクション』低予算製作でスターたちを動かした真の奇跡とは?

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※2019年8月記事掲載時の情報です。


『パルプ・フィクション』あらすじ

早朝のロサンゼルス。盗まれたトランクを取り戻そうとする2人組のギャング、ビンセントとジュールス。ボスの情婦と一晩のデートをするハメになるビンセント。ボクシングの八百長試合で金を受け取るボクサーのブッチ。誤って人を殺し血塗れになった車の処理に右往左往するビンセントとジュールス。ギャングのボス、マーセルスを軸としたこれらの物語がラストに向けて収束していく……。


Index


虚構の極み、パルプフィクション



 最新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)も好評な、鬼才クエンティン・タランティーノ。彼の映画を見ていつも感じるのは、とてつもなくクールな”虚構”の楽しさだ。映画館で映画に向かう観客は”虚構”と向き合う楽しさを知っている。大の映画ファンであるタランティーノは、それを踏まえた上で”虚構”を演出する。


『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』予告


 そこからあふれ出るクールなテイスト――テンポの良いジョーク混じりの会話、ハッとさせる映像の構図、瞬発力に優れたバイオレンス、ビジュアルにマッチした音楽、往年の映画へのオマージュなどなど――によって、彼の作品は映画ファンを大いに熱狂させてきた。


 『レザボア・ドッグス』(92)でインディーズの最先端として脚光を浴びたタランティーノを、ワールドワイドな鬼才に押し上げた『パルプ・フィクション』(94)は、“三文小説(=パルプ・フィクション)”というタイトルのとおり、虚構の極みと言えるかもしれない。


 バイオレントでファニー、なおかつ下品なセリフが飛び出す、そんな映画が、芸術性を競うカンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したのは、ある意味、快挙。授賞式でブーイングを発した観客に、タランティーノが笑顔で中指を突き立てるという痛快なオマケまで付いてきた。


『パルプ・フィクション』予告


 ハリウッド映画らしいスター共演も、アートを競う場ではマイナスのイメージで見られがちだ。しかし、タランティーノ作品にはアクの強いスターの存在は重要である。本稿ではスターの存在という切り口で『パルプ・フィクション』の魅力を探ってみたい。


 まずは物語のおさらい。3話からなるオムニバス・スタイルであるのはご存じのとおり。ボスの愛妻ミアの外出に同行することになった殺し屋ヴィンセントの苦境、そのボス、マーセルスの八百長の指示に反して八百長ボクシング試合に勝ってしまったボクサー、ブッチの逃亡、そしてヴィンセントと相棒ジュールスの死体処理の悪戦苦闘。たがいに関連し合うこれらのドラマを、犯罪者カップルによるレストラン強盗の顛末を描いたプロローグとエピローグに挟まれる。



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