1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 激突!
  4. 『激突!』相手は運転手ではなくタンクローリー!描いたのは平穏な日常をぶち壊す巨大なモンスター※注!ネタバレ含みます。
『激突!』相手は運転手ではなくタンクローリー!描いたのは平穏な日常をぶち壊す巨大なモンスター※注!ネタバレ含みます。

(C) 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.

『激突!』相手は運転手ではなくタンクローリー!描いたのは平穏な日常をぶち壊す巨大なモンスター※注!ネタバレ含みます。

PAGES


運転手の顔を最後まで映さない理由



 スピルバーグは運転手の顔を一度も観客に見せない。運転席に座る運転手の体の一部、ウィーバーがレストランで垣間見る蛇革のブーツを履いた運転手のものと思しき足元、ウィーバーに追い越しを促す車窓から出た腕、以上の3カットが映し出されるのみだ。結果、観客は人間対人間の戦いを傍観するのではなく、タンクローリーが意思を持ったかように行動する姿を目の当たりにすることで、一種、超自然的な体験に身を置くことになる。


 平穏な日常をわけもなくぶち壊す巨大なモンスター。このアイデアは『ジョーズ』(75)に引き継がれる。自ら監督を熱望したスピルバーグは、製作者のデイヴィッド・ブラウンとリチャード・D・ザナックに、是非『激突!』を観てくれと嘆願する。その際、彼はこう言って2人を説得したという。「『激突!』は陸上の『ジョーズ』だから」と。



 2つの作品は、平凡な市民が得体の知れない化け物と対決することで発生する恐怖と不安、勇気と決断を描き、スピルバーグが放った数多ある傑作の中でも、やはり群を抜いている。それぞれ主演にデニス・ウィーバーとロイ・シャイダーという、誰もが自分を投影できる無色の俳優をキャスティングしたことも、成功の一因だろう。


 今年の12月に73歳を迎えるハリウッドのレジェンド、スティーブン・スピルバーグ。今は来年12月に世界公開される『ウエスト・サイド・ストーリー』を製作中で、さらに2本が待機中だという。そんな生ける伝説をして、「今も年に最低2回は観ている。自分が、この作品で何をやったかを忘れないために」と言わしめるのが、何と、48年前に撮ったこの『激突!』だ。つまり、『激突!』はスピルバーグを怖いもの知らずだった映画少年へと回帰させる、元気の源なのである。


<参考文献>

https://www.empireonline.com/movies/features/edgar-wright-interviews-steven-spielberg-about-duel/



文 : 清藤秀人(きよとう ひでと)

アパレル業界から映画ライターに転身。映画com、ぴあ、J.COMマガジン、Tokyo Walker、Yahoo!ニュース個人"清藤秀人のシネマジム"等に定期的にレビューを執筆。著書にファッションの知識を生かした「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社刊)等。現在、BS10 スターチャンネルの映画情報番組「映画をもっと。」で解説を担当。 



今すぐ観る


作品情報を見る




『激突!』

Blu-ray: 1,886 円+税/DVD: 1,429 円+税

発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

(C) 1971 Universal Studios. All Rights Reserved.

※ 2019年9月の情報です。

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. 激突!
  4. 『激突!』相手は運転手ではなくタンクローリー!描いたのは平穏な日常をぶち壊す巨大なモンスター※注!ネタバレ含みます。