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『サムライ』フレンチ・フィルム・ノワールの傑作が描く孤高の生き様

(c)Photofest / Getty Images

『サムライ』フレンチ・フィルム・ノワールの傑作が描く孤高の生き様

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黄金コンビ、アラン・ドロンとメルヴィル



 『サムライ』は、この先、『仁義』(70)、『リスボン特急』(72)と続く監督・主演コンビの最初をかざる作品だ。


 アラン・ドロンが出演を決めた経緯も面白い。以前から共に映画を作る道を探っていたメルヴィルとアラン・ドロン。アラン・ドロンが国際舞台での活動に専念することを決意し、これがラストチャンスかと思われた矢先、メルヴィルはアラン・ドロンのために書き上げた脚本を手に、自宅にまで乗り込んで朗読してみせる。序盤、7分半、そこには全くセリフがなかった。その時点でアラン・ドロンは「これで十分です。この映画に出ます」と宣言したという。



『サムライ』(c)Photofest / Getty Images


 「タイトルは何というのですか?」との問いにメルヴィルは「サムライ」と答える。静かに納得を示したアラン・ドロンは、メルヴィルに自分の寝室を見せてくれたそうだ。そこには革張りのベッドがあり、壁にはサムライの槍と刀と脇差が飾ってあったという。


 言うまでもなく寝室とは、自宅で最もプライベートな場所である。そんな秘めた場所にサムライの命とも言える品々を飾っているのを見せるとは、あたかも自分の胸を割き、心の中にサムライの魂が宿っているのを告白するようなものだ。さぞやメルヴィルも心動かされたことだろう。かくも儀式的なやり取りを交わした後、両者の記念碑的な一作がいよいよ動き出していったのである。



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