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『サムライ』フレンチ・フィルム・ノワールの傑作が描く孤高の生き様

(c)Photofest / Getty Images

『サムライ』フレンチ・フィルム・ノワールの傑作が描く孤高の生き様

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日本文化の域にとどまらない価値、観念、美学



 ふと、メルヴィルの映画作り全般への姿勢を示す次の言葉を思い出した。


 「私の作品の中で想像力の産物とみなされる風潮があるものは、実際は記憶力の結果である。通りを歩いている時、ある出来事を目撃した時、何かを体験した時に、記憶にとどめたことなのだ(もちろん私はそれを置き換えて映画化している。自分が本当に体験したことをそのまま描くのは大嫌いだから)」(*1)


 まさにこの『サムライ』は、メルヴィルがいったん受け止めたものを、そのまま真似するのではなく、彼にしか成しえない業で換骨奪胎して再構築したものに思えてならない。だからこそ言葉や文化を超えて、もっと深い部分で共鳴を広げていったのだろう。公開時、日本の観客にも新鮮に受け止められ、さらにそのエッセンスやスタイルが、今日に至るまで世界各国の映画作家に様々な形で影響を与え続けているのも、深く納得なのである。



<参考資料>

サムライ ジャン=ピエール・メルヴィルの映画人生」ルイ・ノゲイラ著/井上真希訳/2003年/晶文社

(*1)同書「サムライ」の中の、メルヴィル本人が綴った「はじめに」(P13)より引用



文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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