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『アス』戦慄ホラーの中に現代社会への視点を潜ませた、ジョーダン・ピールの監督術 ※注!ネタバレ含みます。

(c)Universal Pictures

『アス』戦慄ホラーの中に現代社会への視点を潜ませた、ジョーダン・ピールの監督術 ※注!ネタバレ含みます。

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表層に仕掛けられた巧妙なアイテム



 『アス』を表層的に観た時まず目につくのは、巧妙に仕掛けられた様々なアイテムだ。冒頭から1986年の”Hands Across America”の映像が象徴的に映し出され、幼き日のアデレードが身につけるのは、マイケル・ジャクソンの「スリラー」のTシャツ。そういえば「スリラー」のPVで真っ赤な衣装に身を包み、やがて地底から這い出したモンスターを従えて襲いくるマイケルの姿は、本作の展開を暗示するものと言える。


「スリラー」MV


 また、所々で意味深に現れる「1111」という数字は、やがて別荘前に現れる4人の訪問者たちの不気味なシルエットのようだし、これらもまた人と人とが手をつなぎ連なっていく”Hands Across America”をも想起させる。なぜ、このような80年代のテイストばかりが詰め込まれているのか。それはおそらく、“テザード”と称するドッペルゲンガーたちにとって、80年代のこうした記憶こそが(彼女の)持ちうる精一杯の知恵であり、知識であったからだろう。


 この記憶を頼りに彼らが必死に繋がりあおうとする様は、不気味でありながら切実さや懸命さを感じさせる。本作はある意味、テザードたちの側から見たHands Across Americaなのかもしれない。



『アス』(c)Universal Pictures


 それにこの映画を象徴する「ハサミ」というアイテムも実に示唆的だ。瓜二つの部位が重なり合って機能し、そこに表裏など存在しない。そして共に支えあって物を断ち切るという役目を放棄し、握りしめ垂直に振り下ろすとき、それは無慈悲な凶器となる。



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