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『サタンタンゴ』上映時間7時間18分!伝説の作品が問いかける映画の在り方

『サタンタンゴ』上映時間7時間18分!伝説の作品が問いかける映画の在り方

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驚異的な長回しと、移動撮影



 近年、ハリウッド映画は多いものだと3,000以上のカットで構成されているものも珍しくなく、比較的カットが長い傾向にある日本映画でも、600~700はくだらないことが多いだろう。それに対して『サタンタンゴ』は7時間超の上映時間に対し、全体で150カットほどしかない。平均すると1カットが3分近くにもなる。筆者も鑑賞中、試みに1カットの長さをいくつか測ってみたが、短くとも1分、長いもので6分以上のカットがあった。長回しを好む監督は少なくないため、これだけなら決して珍しいことではないが、同作の撮影技法ではもう一つ大きな特徴がある。それは移動撮影の多用だ。つまりカメラがほとんどのカットで動き続けているのだ。


 映画の幕開きは農場で牛たちが小屋から出てくるカット。20頭ほどの牛たちの動きをカメラは静かに端正な横移動で延々と追いかける。途中建物の壁に阻まれ、牛たちの動きが見えなくなるが、カメラは構わずそのまま動き続け、壁が途切れると牛たちがまた姿を現す。そして牛たちは画面奥にある建物の向こう側へとゆったりとした歩みで消えていく(このカットは恐らく5分近くあった)。



『サタンタンゴ』


 このような調子で全編にわたってカメラは動き続ける。例えば2人の人物が会話しているシーンでもカットを割らず、カメラが二人の間を静かに行き来しながら、一つのシーンを見せ切る。この長回しと移動ショットでタル・ベーラは何を捉えようとしたのか。7時間という途方もない鑑賞時間の間、その意味を考え続けた筆者の頭に浮かんだのは「純粋持続」という言葉だった。



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