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『インサイド・マン』名コンビ、スパイク・リー&デンゼル・ワシントンの最大ヒットとなった異色作
らしくないスパイク・リー
今回の異色作品の中で、一番スパイク・リーらしくないのは、サウンドトラックだ。スパイク・リーと言えば、こだわりのジャズである。初期作品では、父でジャズ・ミュージシャンのビル・リーが、後期ではジャズ・トランぺッターのテレンス・ブランチャードが、主に音楽を担当している。
今回も、テレンス・ブランチャードが担当しているが、冒頭でいきなりインドの曲「チャイヤ、チャイヤ」が流れる。インド映画『ディル・セ 心から』(98)で使用された曲だ。スパイク・リーは母校ニューヨーク大学の教授でもあり、生徒からボリウッド映画の素晴らしさを聞いて観たのが『ディル・セ 心から』だった。気に入ったスパイクは、早速本作にてその曲を使用してしまったのである。実は臨機応変な監督なのだ。
「チャイヤ、チャイヤ」
最初に示したように、本作はスパイク・リーにとって最大のヒット作となった。とは言え、国内だけでは1億ドルを突破していない。映画ファンなら誰もが知る監督であるが、以外にもヒット作には恵まれていないのである。気軽に楽しむ人たちのための映画を、それまで作ってこなかったからだ。
しかし、本作だけはライトな映画ファンも見に行ける、エンタテイメント性溢れた作品となった。そして、スパイク・リーにしては珍しく続編の話も出たが、残念ながらその話は消滅してしまった。つい先日、アメリカでは『Inside Man : Most Wanted』(19/日本未公開)という作品が、まるで本作の続編のように宣伝され配信されていたが、スパイク・リーもデンゼル・ワシントンもラッセル・ジェウィルスも全く関係していない作品である。
ここまで、如何に本作がスパイク・リーにとって異色であるか書き綴ったつもりだったが、結局は本作で垣間見られるスパイク・リーらしさを、熱く語ってしまったように感じる。そう、本作は異色ながら実はとてもスパイクらしい作品なのだ。名監督というのは、いつだって、どんな作品だって、自分色に染めてしまうものなのかもしれない。
雑誌「映画秘宝」(洋泉社)を中心に執筆。著書『ブラックムービー ガイド』(スモール出版)が発売中。
『インサイド・マン』
Blu-ray: 1,886 円+税/DVD: 1,429 円+税
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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※ 2019年10月の情報です。