たった55Pの企画書の中に原石の輝きを見出す
作者マーゴット・リーの奮闘は、結果的に2010年の取材着手から実に5年余りの歳月を要するものとなった。だが、さすがにこの「誰も知らなかった」題材は執筆中から多くの関係者の関心を集めた。そこで本作は代理人を立て、執筆作業と並行して映画化権をめぐる交渉が展開していくことになる。
そうした中で、ついに敏腕女性プロデューサー、ドナ・ジグリオッティ(『恋に落ちたシェイクスピア』、『愛を読むひと』)が権利獲得に向けてテーブルに着く。彼女は本作をめぐるたった55ページの企画書の中に原石の輝きを見出し、この題材によってもたらされる驚きと感動を一本の映画として具現化していくことを決意するのである。ちなみに原作本のあとがきにはジグリオッティについて「これまで出会ったあらゆるプロフェッショナルのなかでも、抜きんでた才能のもちぬし」との賛辞がしたためられているが、こうした箇所からもまさに彼女の目利きと推進力がこの映画に無くてはならない大きな歯車となったことが伺えよう。