三池監督の実演に引っ張られた、ハイテンション演技
Q:充実の時を迎えられていることが伝わってきます。ちなみに『初恋』の脚本を読んだ第一印象は、いかがでしたか?
染谷:まず、読み物として最高でしたね。面白い小説に出会ったときみたいに、ケラケラ笑いながら読みました。脚本を読んだときに、加瀬という男は活字に書いてあることをやるだけで面白くなると思ったんです。本人は自分の詰めが甘いことに気づいていないから、基本ドヤ顔なんですよね。命の危機にさらされるまでドヤでいようと思って演じました(笑)。
Q:久々の三池組は、どんな現場でしたか?
染谷:脚本で描かれていたことが、こんなにも豊かだったのかと現場で気づかされましたね。例えばアクションにしても、三池監督の演出にかかるとどんどん(イメージが)膨らんでいく。アクションの手順を決めるだけで、みんなが爆笑してしまう現場でした。
Q:今回演じられた加瀬は、物語のテンションを引っ張るキャラクター。彼が動くことで物語も動きますが、演技の出力の仕方など、どうやって調整されたのでしょう?
染谷:三池監督は、「こんな感じでやりたい」と実際にご自身で動いて見せてくださるんです。それを見て、僕もやってみることは多かったですね。演技の出力レベルの話でいうと、その際の三池監督のテンションの高さに引っ張られていたと思います。
三池監督は、演じてくださるときに台本にないセリフを足されるんですよ(笑)。例えば、(部下の)ヤス(三浦貴大)に発砲するシーンでは、三池監督が「これは訓練だよ! 訓練なんだ馬鹿野郎!」と台本にないセリフで演じ始める。そうすると現場が爆笑する。すごく白熱して演じられているから、「それくらいのレベルで演じるんだな」と解釈して、アドリブもそのままもらいました。
Q:お話を聞いているだけで面白い(笑)。染谷さんから、三池監督にアドリブを提案したことはあったのでしょうか。
染谷:ありました。普段はそんなことはないのですが、台本を読んでいる段階で「ここでこういうことを言いたいな」って珍しく思ったんです。三池監督の作品を今までやらせていただいているからこそ、1回見せたいなと思って。後半の“あるもの”に話しかけるシーンは、元々は台本にはなかったものです。
あと、僕がやりたかったことを先に監督がおっしゃったときもありました。撃たれたときに「熱ッ」って言うシーンがあったんですが、監督から「こうやってみて!」って言われたときに「それやりたかったやつです!」って(笑)。
Q:以心伝心ですね。そんな染谷さんから見た、三池監督の魅力とは?
染谷:人間力でしょうか。自分は、現場の三池監督は『悪の教典』からしか知らないんですが、すごく優しいんです。役者にすごく愛情があって、でも緊張感が現場には流れていて、スタッフ・キャストが「何か1つでも残さなきゃ」という気持ちになってしまう。
Q:今回は窪田正孝さん、内野聖陽さん、大森南朋さんといった方々と共演されました。まさにオールスターキャストでしたね。
染谷:皆さん一人一人が個性の塊で、お芝居を見ているだけで楽しくなってしまって(笑)。いちお客さんとして、観ている自分がいましたね。