松坂桃李、31歳。彼が動くときには、必ずそこに「純然たる面白さ」がある。
日本映画の台風の目となった『新聞記者』(19)、性と救済を描く衝撃作『娼年』(18)、列島を熱狂させた『孤狼の血』(18)――。こんな攻めた作品選び、他の誰が真似できようか。「役者は、好奇心が旺盛でなければならない」などと言われるが、彼の「面白いものに飛びつく嗅覚」は、図抜けている。つまり、役者としての魅力に、コンシェルジュとしての魅力が上乗せされているのだ。映画ファンにとって、目が離せるはずもない。
映画やドラマに限らず、『遊☆戯☆王』や『ファイナルファンタジー』といった趣味に対する濃すぎる愛情など、松坂は「好きなものへの愛着」も隠さない。本人も「楽しさ」を重視しているというが、この生きざまが、「人物に多面性を持たせる」役者としての信条に繋がっているのだろう。松坂がキャラクターを型にはめて演じることは、決してない。どんな役を与えても、間違いなく三次元にして返してくる。
2009年の役者デビュー作『侍戦隊シンケンジャー』から、11年。自らの在り方に悩んだ時期もあったというが、我々が今目にする松坂の姿は、実に軽やかで心地よい。「面白い場所に連れて行ってくれる」確信を、自然と抱かされてしまう。
観ているだけで高揚する役者、松坂桃李。今回は、彼の“キセキ”を彩る10本を厳選して紹介しよう。
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松坂桃李出演のオススメ映画(2011~2012)
1.『僕たちは世界を変えることができない。』(11) 監督:深作 健太 126分
大学生4人が、カンボジアに小学校を建てるために奔走する実話ベースの青春ドラマ。松坂にとって、戦隊もの以外では初の映画出演作であり、海外ロケも経験したメモリアルな一作だ。
退屈な毎日を過ごす大学生たちが、「150万円を集めてカンボジアに小学校を建てる」を目標に定め、現地の過酷な現実を目の当たりにしつつも、邁進していくハートフルなストーリー。松坂のほか、向井理、柄本佑、窪田正孝といった現在の人気俳優たちがメインのキャラクターを演じている。
本作で松坂は、見た目は“ギャル男”だが、熱い心の持ち主を好演。コミュニケーションスキルが高く、資金調達やサポーターの勧誘を積極的に行う、頼れる男ぶりを見せつけている。なお、本作はドキュメンタリー風の演出に重きを置いており、現地を訪問するシーンなどではセリフが用意されないこともしばしばだったとか。松坂の表現力の肥やしになったことは、想像に難くない。
本作の後は、瀬々敬久監督作『アントキノイノチ』(12)では心に闇を抱えたいじめっ子、人気ドラマの劇場版第1作『麒麟の翼 劇場版・新参者』(12)では父親を亡くした高校生など、シリアスな役柄に続々と挑戦。この時点で、高い演技力を披露している。
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2.『ツナグ』(12) 監督:平川 雄一朗 129分
松坂のキャリアの上でも初期の重要作。名女優・樹木希林と“バディ”を組み、主演の大役をものにしてみせた。
生者と死者を一夜だけ引き合わせる“仲介人”=ツナグを題材にしたヒューマンファンタジー。祖母(樹木)からツナグの任を引き継ぐことになった高校生(松坂)が、様々な人の“想い”に触れ、成長していく姿を紡いでいく。平凡な高校生活を送りながらも、両親が謎の死を遂げた過去を引きずる、影のあるキャラクターに挑戦した。
なお、2011年と2012年には、松坂は日本アカデミー賞、キネマ旬報ベスト・テン、日刊スポーツ映画大賞などで新人賞を数多く獲得。「松坂桃李」の名前が、徐々に知れわたっていく。そして、NHK連続テレビ小説『梅ちゃん先生』(12)によって、大きく飛躍を遂げることに。
2012年から13年にかけては、『今日、恋をはじめます』(12)、『ガッチャマン』(13)と映画の主演が続く。