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フィクションを通して、現実に起こっている問題を伝える『ワンダーウォール 劇場版』前田悠希監督【Director’s Interview Vol.61】

フィクションを通して、現実に起こっている問題を伝える『ワンダーウォール 劇場版』前田悠希監督【Director’s Interview Vol.61】

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フィクションを通して現実を伝える



Q:以前はドキュメンタリーを作られていたそうですが、今回のドラマ制作に活かした部分などはありますか?


前田:僕もそうですが、実は今回のプロデューサーもカメラマンも、ドキュメンタリー畑の人間なんです。


ドキュメンタリーだと、ディレクターの隣にカメラマンがいて、現実で何かが起きるのをしばらく待って、その場に我慢強くいることが多いんです。下手にこちらが介入するのではなく、なるべく場を崩さず現実を切り取っていく、その精神性みたいなものは、結構意識していましたね。


あとは、監督がどんどん進めていくというよりも、もう少しゆるい空気感というか、場を見守るようなことを大事にしていました。


Q:学生の時は自主映画を撮られていたそうですが、映画やドラマの演出志望でNHKに入られたのでしょうか。


前田:いえ、NHKに入った時はすでに、ドキュメンタリーをやりたいなと思っていました。元々はすごく映画が好きだったので、学生時代はフィクションを撮っていたのですが、映像に関わる仕事をしたくてNHKを受けました。




Q:それまでドキュメンタリーを作られていて、今回ドラマになったのは、どういった経緯があったのでしょうか。


前田:そもそも、地域発ドラマを作ってみたい気持ちがあったんです。プロデューサーも同じ気持ちだったので、意気投合して、じゃあ、やろうよ!みたいな感じでしたね。それで二人で企画を出しました。


Q:社会問題をエンターテインメントとして表現することは、日本では少ない印象がありますが、『ワンダーウォール』は見事に成功しているように感じました。社会的なテーマにエンターテインメントを盛り込むのか、それともエンターテインメントがベースにあって、そこに社会的なテーマを織り込んでいくのか。ドキュメンタリーか、フィクションかの違いに似ているのかもしれませんが、その辺はどう意識されていますか。


前田:今回の作品については、必然的にドキュメンタリー要素が強くなっていったように思います。現実にある学生寮が持っている“強さ”みたいなものを、フィクションにして伝えていこうとしたのですが、何かこちらで脚色する必要もないと言うか、学生寮をそのままドキュメンタリーとして撮影しても十分成立するような、その場の持つ力みたいなものがありました。なるべくそれを、そのまま伝えようというスタンスはありましたね。


そういう意味では、現実をフィクションによって改変するというよりは、フィクションという媒体を通して、現実に起こっている問題や、現実の魅力みたいなものを伝える感じだったと思います。



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