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フィクションを通して、現実に起こっている問題を伝える『ワンダーウォール 劇場版』前田悠希監督【Director’s Interview Vol.61】

フィクションを通して、現実に起こっている問題を伝える『ワンダーウォール 劇場版』前田悠希監督【Director’s Interview Vol.61】

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京都の大学学生寮を舞台に、寮の存廃問題と対峙する若者たちを描く『ワンダーウォール 劇場版』。元々、NHKの地域発ドラマだった本作は、多くの熱烈な支持と関係者の努力により、映画版として劇場公開にまで至った。本作の演出を手がけたのは、NHKの若手ディレクター前田悠希氏。それまではドキュメンタリー作品を多く手がけてきた同氏が、初のドラマ制作にどう挑んだのか。前田氏に話を伺った。


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ほぼ初稿のまま撮影した脚本



Q:ドラマ製作当時も今も、前田監督はNHKにお勤めなんですよね。


前田:そうですね。今もNHKに勤めてまして6年目になります。撮影当時は25歳で4年目くらいでしたね。


Q:前田監督が本作に携わることになったきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。


前田:当時はNHK京都にいたのですが、地方局が作る「地域発ドラマ」という枠がありまして、京都で何か作れないかという話が出たんです。それで、まずは学生というテーマで作ることが決まりました。そこから、学生寮に触れてみると面白いかもねという話になり、企画が始まりました。それが2017年の春頃です。その後しばらく経って、同年の12月頃に渡辺あやさんに脚本をお願いしました。


Q:渡辺あやさんに脚本をお願いする際には、どういったことを話されたのでしょうか。


前田:当初の企画では、学生寮独特の文化みたいなものを前面に押し出して、学生寮や京都の学生の日常をスケッチしていくような内容でした。そこに就活で悩んでいる子が入ってきて、現代の子が学生寮に触れて何かを感じるといった、あらすじだったんです。




その後、渡辺さんやスタッフで学生寮について話していく中で、学生寮って実はすごく古くて、建て替えや存廃など色々と問題を抱えていることがわかってきました。するとそこで、渡辺さんが以前から抱えていた社会に対する問題意識と、学生寮の存廃問題が合致できそうな感じがあったようで、学生寮を描くのであれば、存廃問題をテーマにしませんか。という話になったんです。


Q:渡辺さんの脚本に対しては、監督からリクエストなどはあったのでしょうか。


前田:いえ、リクエストなどはほとんどなくて、実はほぼ初稿のまま本編を撮っている感じです。渡辺さんと一緒に学生寮の取材をしたり、存廃問題について議論したり、長い時間をかけて一緒に情報整理をしていたので、その時点でお互いのズレがない状態にまでなっていました。これで、あとは(渡辺)あやさんお願いします!と書いていただいたのですが、出来上がってきたものが素晴らしくて、僕もスタッフも異論はありませんでした。それでそのまま撮った感じですね。



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