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フィクションを通して、現実に起こっている問題を伝える『ワンダーウォール 劇場版』前田悠希監督【Director’s Interview Vol.61】

フィクションを通して、現実に起こっている問題を伝える『ワンダーウォール 劇場版』前田悠希監督【Director’s Interview Vol.61】

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カットを割らない理由



Q:具体的な演出について聞かせてください。成海璃子さん演じる香の社員証や、山村紅葉さん演じる寺戸さんのあだ名など、本作にはディテールがすごく詰まっていて、しかもそれがちゃんと伏線として機能しており、面白さを増幅させているように感じました。その辺りは、脚本の段階で既にあったのでしょうか、それとも監督の方で色々とアレンジされたのでしょうか。


前田:渡辺さんの中で、カット割りが出来ているんじゃないかってくらい、かなり精緻に脚本に書いてありました。だからそれを撮りこぼさないように必死でしたね。脚本の段階でかなり世界観が出来上がっていました。


Q:カットを割らず芝居の流れを優先しつつ、かつ脚本に書かれているディテールもちゃんと拾うとなると、それをフレームで切り取っていくのは結構難しそうですが、現場ではどんな感じだったのでしょうか。


前田:カメラマンには、自由に撮ってくださいと言っていました。カットも割らず動きだけを共有して、あとはもう、好きに撮ってくださいと。それで、好きに撮ってもらったら、ドキュメンタリーのカメラマンだからなのか、抑えるべきところはちゃんと抑えてくれていましたね。


実は、事前にある程度カット割はしておいたのですが、実際現場で自由に撮ってもらったら、カット割に含んでいた要素は、かなり撮れていましたね。思った以上にスムーズに撮れたのではないかと思います




Q:岩崎太整さんの音楽もとてもよかったです。音楽に関してはどのような希望を出されたのでしょうか。


前田:感情を盛り上げるための音楽というよりは、『ソーシャル・ネットワーク』(10)の音楽のように、状況にシンプルに音を付ける感じがいいですね。と話しました。あとは、太整さんが京都の街を歩きながら、音楽を作ってくれましたね。


Q:なるほど。確かに『ソーシャル・ネットワーク』の雰囲気はありましたね。


前田:そうですね。そこは意識しましたね。


Q:今回ドラマを映画化される際に、アップデートした部分はあったのでしょうか。


前田:ラスト部分は再撮影して変更しています。あとは少しだけ編集を変えましたね。例えば、シーン頭を延ばしたりして、場が醸し出す空気感を少し長めに作ったりしました。その辺は本当に微調整のレベルですね。



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