カットを割らない理由
Q:具体的な演出について聞かせてください。成海璃子さん演じる香の社員証や、山村紅葉さん演じる寺戸さんのあだ名など、本作にはディテールがすごく詰まっていて、しかもそれがちゃんと伏線として機能しており、面白さを増幅させているように感じました。その辺りは、脚本の段階で既にあったのでしょうか、それとも監督の方で色々とアレンジされたのでしょうか。
前田:渡辺さんの中で、カット割りが出来ているんじゃないかってくらい、かなり精緻に脚本に書いてありました。だからそれを撮りこぼさないように必死でしたね。脚本の段階でかなり世界観が出来上がっていました。
Q:カットを割らず芝居の流れを優先しつつ、かつ脚本に書かれているディテールもちゃんと拾うとなると、それをフレームで切り取っていくのは結構難しそうですが、現場ではどんな感じだったのでしょうか。
前田:カメラマンには、自由に撮ってくださいと言っていました。カットも割らず動きだけを共有して、あとはもう、好きに撮ってくださいと。それで、好きに撮ってもらったら、ドキュメンタリーのカメラマンだからなのか、抑えるべきところはちゃんと抑えてくれていましたね。
実は、事前にある程度カット割はしておいたのですが、実際現場で自由に撮ってもらったら、カット割に含んでいた要素は、かなり撮れていましたね。思った以上にスムーズに撮れたのではないかと思います
Q:岩崎太整さんの音楽もとてもよかったです。音楽に関してはどのような希望を出されたのでしょうか。
前田:感情を盛り上げるための音楽というよりは、『ソーシャル・ネットワーク』(10)の音楽のように、状況にシンプルに音を付ける感じがいいですね。と話しました。あとは、太整さんが京都の街を歩きながら、音楽を作ってくれましたね。
Q:なるほど。確かに『ソーシャル・ネットワーク』の雰囲気はありましたね。
前田:そうですね。そこは意識しましたね。
Q:今回ドラマを映画化される際に、アップデートした部分はあったのでしょうか。
前田:ラスト部分は再撮影して変更しています。あとは少しだけ編集を変えましたね。例えば、シーン頭を延ばしたりして、場が醸し出す空気感を少し長めに作ったりしました。その辺は本当に微調整のレベルですね。