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『人数の町』荒木伸二監督 中村倫也さんに最初に伝えたのは、「エロス」でした。【Director's Interview Vol.75】

『人数の町』荒木伸二監督 中村倫也さんに最初に伝えたのは、「エロス」でした。【Director's Interview Vol.75】

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日常に1つ要素を足すだけで、印象が変わる



Q:ありがとうございます。先ほど「必要最低限の情報でものを作る」と話されていましたが、『人数の町』でも、舞台は現実的な廃墟だけど、そこにポンッと電光掲示板を配置し、「デュード」「チューター」というワードを投入することで、一気にSF感を生み出す、という演出が秀逸でした。これは当初から計画していたものなのでしょうか。


荒木:「世界観を作る」というと、「ドイツ表現派みたいに」とか「スピルバーグのように」といった思考で、こだわりの美術を作ること、と思いがちなんですが、今、見えている風景にちょっと何かを足したら、それだけでまったく違った世界に見えるんです。


たとえば今、みんながマスクをしている様子を写真に撮って1年前に送ったら、「一体どんなフィクションなんだろう」と思うじゃないですか。


Q:確かに……!


荒木:日常描写はそのままでも、「全員がマスクをしている」という要素を足すだけで、何かが変わる。そういうことが、映画の醍醐味だと思います。




先日、『人数の町』を観てくれた友人が「映画を観た後に六本木を歩いたら、まるで違った町に見えた」と言ってくれたんですが、こういった効果があるから、映画は面白い。アニメとかだったらとことん作りこんだ方が面白くなるかとは思うんですが、その場所を撮っただけなのに、何かが変わる・違って見えるということは、意識しましたね。


本作でも当初、ただの団地とか小学校で撮る?という案もありました。日本中にあふれている、余ってしまった場所でやってみようかと。ただ、そこにほんの少しの“夢”を入れたいなと思い、廃墟での撮影に決着したんです。


そのため、映像的な面白さを追求して多少作りこんだ部分はありますが、基本は「この道を歩いていったらこの町にたどり着ける」「舞台は現代で、いま起こっていることである」のがすごく大事な立脚点。そこを失っちゃうと、あんまり僕は面白いと思わない。


「こういう場所、実際にあるかもね」と感じられる、というのは目標でした。



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