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『人数の町』荒木伸二監督 中村倫也さんに最初に伝えたのは、「エロス」でした。【Director's Interview Vol.75】

『人数の町』荒木伸二監督 中村倫也さんに最初に伝えたのは、「エロス」でした。【Director's Interview Vol.75】

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「わからない」を楽しんでほしい



Q:本作の冒頭、中村さんの横顔をとらえたカットも印象的でした。


荒木:学生時代に自主映画を作っていたとき同じアングルから撮っていたんです。撮影中は気づかなかったんですが、初号の時、ハッと気づいて。自分の深い部分での好みかもしれないですね。ああいっただだっ広い場所に人間がぽつんと立っていて、そこから話が始まる、みたいな感じは。


今回は、撮影監督の四宮秀俊さんが本当に素晴らしいこともあって、アングルの指定は基本的にしていないんですよ。「絵コンテは描かない」と最初に決めました。その代わりに「寄り」「引き」「切り返し」「俯瞰」などを指定する伝統的な「カット割り」の方法を採用したんです。


ただその中でも、はっきりとしたイメージがあった最初のシーンなんかは、はっきりと「こうしたい」とお伝えしたんです。なんで、あのカットに響いて貰うと、何か嬉しいです。




Q:視覚情報としても、作品に一気に入り込ませる効果としても、素晴らしかったです。しかし本作、冒頭もそうですが、今までにない中村倫也さんが観られますよね。


荒木:情報解禁して、中村さんのファンの方々からすごく反響があって、驚いています。皆さんから本作がどう受け取られるのか……緊張していますね。


もちろん中村さんの魅力はこれが1番だ!と自分なりに思って撮っていますが、作品全体では、余韻とか考える隙とか、疑問符を持ち帰ってもらいたいなと考えています。無責任な意味ではなく、見終わった後に「どう受け取ったらいいの?」「なんだったんだろう」という感覚を持ち帰るのも楽しいよね、と思って貰いたいなと思ってます。


Q:すごくわかります。「咀嚼する」が鑑賞後にも続く映画って、やはり心に残ると思います。


荒木:いま、「共感」がすごく日本映画のベースになっていると思うんです。共感できる・感動できるというのが評価の軸にある。それ自体はすごく好きなんですが、そうじゃない軸がどんどんできていかないと、面白くない。


だから今回、自分が一番作りたいこのタイプの作品を書いて、それを賞に選んでもらえたことがすごく嬉しかったですね。


僕自身、昔から少しわけのわからない位の映画を観てキャッキャと楽しんできた人間なので、ちょっとした迷子感を楽しんでもらえるといいなぁ。求めすぎでしょうか。それがもし、「日本映画の新しい楽しみ方の提案」まで行けていたら、最高ですね。



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監督・脚本:荒木伸二

東京大学教養学部表象文化論科卒。卒論はジャック・リヴェット。CMプランナー、クリエイティブディレクターとして数々のCM、MVを手がける。その傍らシナリオを学び、テレビ朝日21世紀シナリオ大賞優秀賞、シナリオS1グランプリ奨励賞、伊参映画祭シナリオ大賞スタッフ賞、MBSラジオドラマ大賞優秀賞など受賞。第1回木下グループ新人監督賞において、応募総数241作品の中から準グランプリに選ばれた本作で初の長編演出に挑む。



取材・文:SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」「シネマカフェ」「BRUTUS」「DVD&動画配信でーた」等に寄稿。Twitter「syocinema






『人数の町』

9月4日(金)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー

(C)2020「人数の町」製作委員会

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