弱さや愚かさこそ、人間らしさ
Q:本作に限らず、水城先生と行定監督の作品には「清濁混ぜ合わせた人間味」があるように感じます。おふたりにとって、大切なテーマなのでしょうか。
水城:人って、第一印象でいい人だなって思っても、仲良くなるとそうでもない部分が絶対に見えてくるじゃないですか。漫画でそういう面も描くと結構クズキャラみたいに思われがちなんですが、そんなこと言ったらあなたもクズキャラじゃん!って話なんですよね(笑)。
だから私は全部を受け止めて、「人ってそういうものじゃん」と思って描いています。きれいに見えている面もその人の一部だし、エゴだったり汚い部分も一部。そこをちゃんと描いていかないと、読む人にとって心当たりのある話にならないんですよね。
行定:人の愚かさって面白いし、すごく安心しますよね。人生ってきっと、愚かさの積み重ねだと思うんです。失敗をして、乗り越えて、どうにか生きてる。だからこそ、映画では愚かさをなるべく肯定したい。
愚かさにほんの一筋光明が射す瞬間って、今までの全部が帳消しになるくらいスッキリした気持ちになると思うんです。そのちっちゃな奇跡で、人は幸福感を覚えてまた生きられる。
たとえば何百回電話をかけても全然つながらなくて、「無視されてる…」とかあれやこれや悩んじゃった挙句、相手から「ごめん充電切れてた」なんて返ってくることがありますよね。それって笑い話だし愚かだけど、でもそういった小さな幸福が映画になると思うし、最も普遍性を持つような気がします。
水城:やっぱり、弱さとか愚かな部分が見えたときに、ただの記号的な登場人物じゃなくて「人間」なんだなと思えますよね。