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酒場の客から賞金稼ぎへ『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.48】

酒場の客から賞金稼ぎへ『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.48】

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与圧服を着た爬虫類





 ケネス・コリー演じるピエット提督は、ヴェイダーがならず者の賞金稼ぎを艦橋に招き、挙句自分たちの任務を委託したことが気に入らず、部下に不満を漏らす。その際ふと彼がピットから見上げたデッキに立っているのは、爬虫類型でハンター気質の種族トランドーシャンのボスクである。黄色いフライトスーツに身を包み、ウロコに覆われた手足を出して不気味に唸り声を上げる姿が強烈だ(この場面だけでは全く人語をしゃべりそうもないが、アニメシリーズ『クローン・ウォーズ』に登場した際はぺらぺらしゃべるのが可笑しい)。演じたアラン・ハリスは今年の1月に亡くなったが、ボバ・フェットのスクリーンテストでそのプロトタイプ版の衣装(まだ全身が真っ白だった)を着た人物でもあり、数多くいるボバ・フェット俳優の中で最初にその装甲をまとったことでも知られる。


 ボスクはここに並んだ賞金稼ぎの中ではボバ・フェットに次いで好きなキャラクターだが、その見た目には『新たなる希望』でのモス・アイズリー宇宙港の酒場にいたいくつかのキャラクターが組み合わせられている。


 まず大きなトカゲ型の頭部だが、全く同じ被り物がソーリンという種族の客にも使われている。ボスクは赤い目に黒目で表情がつけられているが、ソーリンは黒目がちな瞳をしており、ウロコ肌にもボスクのようなツヤがない。ちょっとした改良、塗り直しに過ぎないが、フォルムは全く同じでありながらだいぶ異なる印象だ。


 また、オビ=ワン・ケノービに連れられたルーク・スカイウォーカーが酒場に足を踏み入れ、雑多な客で賑わう店内を呆気に取られて見回すシーンで、片隅にボスクのと同じ黄色いフライトスーツを着た人物が見られる。ボスクとは異なりスーツの袖は手首まであり、顔にはフルフェイスのヘルメットを被っている。このキャラクターには今のところ名前がなく(どんなモブキャラにも名前とバックグラウンドが与えられるSWにあって珍しい)、「Yellow Spacer」や「Cantina Dude」などという通称で呼ばれている。


 さらに興味深いことに、このフライトスーツの色違いのものを着た人物も現れる。パイロットを探すオビ=ワンが、最終的に話をつけるチューバッカよりも前にやり取りしているボシェックという男だ。時代を感じさせるもみあげがイカすのだが、黒に近い濃紺のフライトスーツは、ボスク(とイエロー・スペーサー)と同じものである。


 このフライトスーツ、酒場の他の客の衣装に比べてだいぶよくできているのだが、二着とも元々は60年代の『ドクター・フー』をはじめSF作品で使用された衣装の使い回しであり、さらに遡れば映像作品のために作られた衣装ではなく、イギリス空軍のために作られた与圧服だそうだ。ボシェック(BoShek)という名前がボスク(Bossk)と似ているのも見逃せない。ボシェックと同じタイプの衣装を使い回したからボスクと名付けられたのか、あるいはイエロー・スペーサー同様ボシェックも名無しのモブだったが、後からボスクの登場を受けて名付けられたか、いずれにせよボスクは酒場の客たちの合体で成り立っていると言える。全然別々だったキャラクターの衣装の使い回しと組み合わせでこれほどおもしろいキャラクターが出来上がるとは。



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