『キングスマン』(14)
監督:マシュー・ヴォーン 出演:タロン・エガートン、コリン・ファース
ロンドンのメイフェアにある紳士服の聖地、サヴィル・ロウにある”キングスマン”の実体は、世界最強のスパイ機関だった…。この導入部から、すでにファッションがメインテーマのような『キングスマン』(14)。
実際の撮影では、1849年創業以来長年サヴィル・ロウに店を構える”HUNTSMAN”が映画の舞台に使われている。グレゴリー・ペック、ケイリー・グラント、ハンフリー・ボガート等、ハリウッドの黄金期を代表するスターを上顧客に持つ伝統店だ。
コリン・ファース扮するスパイのハリーが、タロン・エガートン演じるフレッド・ペリーのポロシャツが常備服の新米、エグジーを案内するのは、ボギーことハンフリー・ボガードも使った”HUNTSMAN”のフィッティングルームだ。映画のヒットによって”HUNTSMAN”のクラフトマンシップが再認識され、同店はかつてのステータスを取り戻しつつあるという。映画のPR効果は絶大である。
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実際に劇中に登場するコスチュームをデザインしているのは、英国発のメンズ専門ラグジュアリー・オンラインショップ”MR.PORTER”と衣装デザイナー、アリアンヌ・フィリップス(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)でアカデミー衣装デザイン賞候補入り)。
エグジーが着るストライプのスーツとレジメンタルタイ、ハリーが着る肩のラインに縫製の良さを感じさせるブラックベルベットのタキシードと広めのバタフライ、イギリス紳士らしいグレンチェックのダブルスーツ、ストライプのスーツにレジメルタルタイ等、登場するのは伝統の粋を結集した逸品揃いだ。
因みに、シャツは英国王室御用達のターンブル&アッサー(ショーン・コネリーもご愛用とか)で、ネクタイはロンドンを代表するハイブランド、ドレイクス(今やイギリスでは稀なファクトリーブランド)と、手抜きはない。ファッションムービーという謳い文句に恥じない『キングスマン』なのである。