「国際スパイ・アクション」
この字面に、どんな映画を想像するだろうか?
多くの人々が思い浮かべるのはダニエル・クレイグが渋くキメる近年の007だろう。もしくはトム・クルーズが身体を張ったアクションを披露する「M:I」シリーズか。となれば『アトミック・ブロンド』(17)もカウントしたいし『ボーン・アイデンティティ』(02)も忘れがたい。
しかし、クレイグ:ボンドは重過ぎるし、トム:イーサンは毎度々々切羽詰まり過ぎだ。全身アザだらけで登場するシャーリーズ・セロンは切実で痛々しいし、ジェイソン・ボーンの「人体実験」という出自は悲しいし恐ろし過ぎる。もっと、余裕のある大人が、鼻歌まじりに世界を救うような、そんな「国際スパイ・アクション」があっても良いんじゃないだろうか?
というよりも、ある一定の年代の人々にとって「国際スパイ・アクション」とは余裕のある大人が鼻歌まじりに世界を救うものだったのだ。
Index
『キングスマン』登場!
ゴロツキとのケンカで実刑がほぼ確定した若者エグジーを救った謎の紳士ハリー。彼は国家に所属しないフリーの国際秘密エージェント集団「キングスマン」のメンバーで、エグジーの亡き父親にはひとかたならぬ恩義があったことと、加えてエグジーの身体能力の高さに目をつけ「キングスマン」へのスカウトに来たのだった。将来も見えないし行くあても無いエグジーは誘われるがまま、他の候補生らと共に厳しい新人選考会に挑むのだった。
一方、IT業界で富を築いたヴァレンタインは地球環境の危機を憂い、人類大抹殺計画を進めていた。そんな不穏な動きを察知したキングスマンは、ハリーを抹殺計画のテスト会場の教会へ送り込むのだが、すでに察知していたヴァレンタインの凶弾に倒れてしまう……。
このスーパー・スパイの誕生編とも言える物語を映像化した監督は『キック・アス』(10)や『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』(11)等、スーパーヒーローの誕生編で名を上げたマシュー・ボーン。共同脚本にマシュー・ボーンと多くのタッグを組み続けているジェーン・ゴールドマン。原作とプロデュースには『キック・アス』コミック原作を担当したマーク・ミラーと、映画『キック・アス』を成功に導いたトリオの再タッグとなる。
主役エグジーを演じるのは、本作が初主演となるタロン・エガートン。ハリーには名優コリン・ファース。その他マーク・ストロング、サミュエル・L・ジャクソン、マイケル・ケインにマーク・ハミルまで引っ張り出した豪華な布陣である。
これら一級のスタッフ、一流のキャストで作られた大スペクタクル・スパイ・アクション映画には裏テーマとも呼べる、ある想いが込められている。