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『キングスマン』軽妙洒脱なチャラさを取り戻した、新しいスパイ映画

『キングスマン』軽妙洒脱なチャラさを取り戻した、新しいスパイ映画

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奇想天外な秘密兵器と軽妙洒脱な「チャラい」スパイ



 「最近の作品は私にはシリアスすぎる。しかし昔の作品は素晴らしい。私を現実から遠く引き離してくれる。」


 これは悪役ヴァレンタインにスパイ映画について聞かれたハリーの答えだ。もちろん劇中世界でスパイをしているハリーにとって、深刻なスパイ活動は身近なものだから、冗談のように聞こえる本音を言った。とも受け取れる。しかし、これは『キングスマン』製作者たちの本音でもあったのではないだろうか?


 ダニエル・クレイグ:ジェームズ・ボンド初登場の『007 カジノ・ロワイヤル』(06)こそ、監督はアクション映画で鳴らしたマーティン・キャンベルが務めたが、2作目以降はマーク・フォスター、サム・メンデス、キャリー・フクナガと、ドラマ作品での繊細な演出や、芸術的な画面構成が評価された、それまでの007監督とは一線を画す監督が揃っている。




 物語でも、ボンドは「時代遅れ」と称されるロートルスパイとして、00ナンバー:殺しのライセンス再試験に落ちてしまうような悲哀まで描いている。そんなクレイグ:ボンド映画は重厚なドラマで構成された格式あるボンド作品群になっている。しかし、ある年代の映画ファンにとっては画竜点睛を欠いたものに感じられるのだ。


 『キングスマン』監督のマシュー・ボーンは1971年生まれ。脚本のジェーン・ゴールドマンが1970年。原作のマーク・ミラーが1969年。映画を牽引する主要メンバーはほぼ同年代で、おそらく彼らが最初に出会った「007」はロジャー・ムーアによるジェームズ・ボンドであろう。


 ムーア:ボンドの特徴は、奇想天外な秘密道具を使いこなし、軽妙洒脱に危機を乗り越える、言ってみれば「チャラい」ボンドだ。強い磁力で金属を吸い寄せる腕時計でドレスのジッパーを下ろす。隠しカメラを動かし映像を写せる腕時計では女性の胸元をアップにする。などなど秘密兵器の奇想天外ぶりもだが、使い方も気が利いている。


 敵対する相手との戦いも小粋なものだ。敵の首領を圧縮空気で風船のように膨らませてから破裂させたり、棺桶から飛び出した殺し屋が投げたナイフを投げ返し棺桶に逆戻りさせる、といった死を扱ったジョークも飛び出す。



 ムーア:ボンド時代は悪役たちも規格外な魅力に溢れていた。中でも『007 私を愛したスパイ』(77)に登場した「ジョーズ」はその代表だろう。鉄の歯で何でも噛み砕いてしまう2メートルを優に超える異形の巨人だ。彼の人気は絶大で、続く『007 ムーンレイカー』(79)へも登場を果たした上に、恋のパートナーを見つけ、生きたまま2人仲良く退出するという幸せな結末まで用意された。


 小粋な秘密兵器。楽しいアクション。魅力的な悪役。マシュー・ボーンらが『キングスマン』で目指したのは、近年のシリアスなクレイグ:ボンドに対し、強いコントラストで眩しく輝く、かつての軽妙な「チャラさ」を持ったスパイの活躍である。



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