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『アンダードッグ』監督:武正晴 × 脚本:足立紳が体現する、「主人公にならない人物に光を当てる」矜持【Director's Interview Vol.97】

『アンダードッグ』監督:武正晴 × 脚本:足立紳が体現する、「主人公にならない人物に光を当てる」矜持【Director's Interview Vol.97】

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大切なのは、役者が演じやすい環境を作ること



Q:今回、森山未來さんは撮影の約1年前、勝地涼さん、北村匠海さんは撮影の半年前からトレーニングをされたそうですね。皆さんの鬼気迫る演技に圧倒されたのですが、武監督は撮影時にどんな言葉をかけたのでしょう?


武:僕はいつも、細かいことを言わないでまず現場でやってもらいます。これだけレベルの高い方々だから、こっちが考えている以上に色々なことを考えて盛り込んできてくれる。それをまず見て、その上で自分が感じたことを付け足していきます。演じている人たちがビビッドに感じることをその瞬間に表現してもらうのが、一番いいですからね。


だから大事なのは、環境を作ることです。ちゃんと人がいる場面を作る。例えば、ボクシングの試合であれば映ろうが映るまいが観客をちゃんと入れて、本物の試合会場で撮影する。セリフや動きは台本に書いてありますが、そのときにその人を演じている俳優にしか感じられないものがあるはずだから、環境を生み出すことを心がけています。


足立:森山さんは脚本の余白を感じ取ってくれつつ、「もう少ししゃべりませんか?」というのはおっしゃっていましたね。


武:晃は、(バイトをしている)風俗店にいるときと、サウナにいるときは安心しきって下らないことをしゃべるけど、家族といると無言になっちゃう。


足立:自分の傷つかないような場所では口数がちょっと多くなるとか、変化を付けてくれていましたよね。ジムにいるのは居心地が悪いけれど、自分が楽できるような場所では気を抜いているといったような、人間っぽさを全部使い分けてくれていました。




Q:その晃が、勝地さん演じる宮木や、北村さん扮する龍太とガチンコで戦い、リングの中で新しい感情を見せていくのが印象的でした。


武:それって、役者同士がぶつかったときに自然に生まれてくるものでもあるんですよね。だからあんまり決め込むんじゃなくて、演者たちが感じるものをつなぎながら、先に進んでいくというアプローチを行いました。


Q:3人それぞれのプレースタイルが性格を表しているのも、観ていてすごく面白かったです。


武:ボクサーのスタイルって、性格が出る部分なんですよね。その辺は3人とも話しました。みんなそれぞれ体も違うし、スタイルも、設定も違う。これは面白かったですね。個性がすごく出ている。


Q:同時に、観ていると過去のボクシング映画の名作がオーバーラップしてくる楽しみ方もできると思います。お2人で共通項に挙げた作品などはあったのでしょうか。


足立:今回は『クライング・フィスト』(06)を意識しましたね。つまり、どちらかに肩入れする話じゃない。


武:それは大きいですよね。なかなかああいう映画はない。


足立:両方に同じくらい肩入れして観られるような作品にしたいとは、思っていました。


Q:では、ボクシング映画に限らず、お2人が共通してお好きな映画は?


武:結構あるよね?


足立:数えきれないくらいありますね(笑)。


武:最初に会ったときに、結構好きな映画が一緒だったんですよね。それも大きかった。最近の映画は、足立さんが面白いっていうものしか観ないです(笑)。


足立:そんなことないでしょう(笑)!


武:いやいや、「何か面白い映画ある?」って聞くと、いつも的確に教えてくれるから。それを観に行けば、まず間違いない。


足立:ありがとうございます(笑)。逆に昔の映画は、武さんから教えていただいていますね。


Q:足立さんは、最近だとどんな映画をオススメされたのでしょう。


足立:『ひとくず』(19)ですね。


武:観に行きましたね。面白かった。


足立:逆に武さんから教えていただいた映画は、パッと思いつかないくらいたくさんありますね。2人で話しているときも、「あの映画のあのシーンがさ……」という話になるので、覚えておいて後から借りてきて観ることが多いですね。



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