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  3. 『アンダードッグ』監督:武正晴 × 脚本:足立紳が体現する、「主人公にならない人物に光を当てる」矜持【Director's Interview Vol.97】
『アンダードッグ』監督:武正晴 × 脚本:足立紳が体現する、「主人公にならない人物に光を当てる」矜持【Director's Interview Vol.97】

『アンダードッグ』監督:武正晴 × 脚本:足立紳が体現する、「主人公にならない人物に光を当てる」矜持【Director's Interview Vol.97】

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名作『百円の恋』(14)の監督:武正晴×脚本:足立紳が、再びボクシング映画を撮る――。なんと心躍る企画だろうか。


11月27日に劇場公開を迎える『アンダードッグ』は、前編/後編あわせて約4時間半にも及ぶ壮大な物語。日本チャンピオンに限りなく近づきながら敗北し、以降はかませ犬(アンダードッグ)としてボクシングにしがみつく男が主人公だ。


その男・晃(森山未來)が、才能あふれる若きボクサー・龍太(北村匠海)や、テレビ番組の企画で始めたボクシングにのめりこむ芸人・宮木(勝地涼)との闘いの中で覚醒していく。いわば、ボクシング映画の花道といえる「敗北からの復活」が描かれていくのだが、そこに武×足立ならではの登場人物の“日常”に重きを置いた視点が、克明に反映されている。


妻(水川あさみ)に去られ、デリヘル嬢の送迎やサウナでのバイトで糊口をしのぐ晃。過去に起こした事件から逃れ、妻(萩原みのり)と幸せな生活を手にしようとする龍太。周囲から「お前の芸はつまらない」「どうせ負ける」とバカにされながらも、ボクシングに活路を見出そうとする宮木。彼らの日々が、リングに上がった瞬間に“生きざま”へと変化し、拳に乗って激しくぶつかり合う。


今回は、武監督と足立氏に、本作の特徴といえる日常描写への想いを中心に語っていただいた。2人の相思相愛ぶりが感じられる対談の様子を、ご堪能いただきたい。


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昨今の「展開が速い」作品に対する反発心



Q:劇場版と配信版の2形態という本作の座組は、最初から決まっていたのでしょうか。


足立:企画段階では配信の連続ドラマというお話だったのですが、作っていくなかで劇場版と両立できるものにしよう、という形になりました。ただ、台本自体は連ドラの形で書いています。


Q:すごく面白いのは、序盤にじっくりと各々の“日常”を描写していることです。ひょっとすると、配信版ではボクシングの描写がないまま1話が終わる可能性もありますよね。とても斬新に感じました。


足立:ありますね。試合とか、大きな出来事がないまま日常だけで終わる回もあります。


Q:日常をしっかり見せる本作は、昨今の作劇のトレンドからすると、かなり異端なのではないかと思います。いまは、展開が速い作品が多いですよね。


足立:僕自身はいきなりトップスピードから入ってくるような作品ではなく、登場人物たちの生活をきっちり描いてから、徐々に熱を帯びてくる映画やドラマで育ってきているんです。


最近の作品は、国内外問わず展開が滅茶苦茶速いと思いますね。そういったものに対する、ちょっとした反発心はあります(笑)。


武:今回のシナリオを読んだときに、「ボクサーの日常を描く」という狙いを明白に感じましたね。聞く前に、読んだだけで分かったから、「今回はそこを追求するのか。これは面白い!」と感じました。


確かにみんながやらないところだと思うし、だんだんそういう“日常”に目を向けなくなってきている。原点回帰としてやってみよう、という思いでした。



 

Q:あえて逆を突くスタイル、素晴らしかったです。ただ個人的に、配信と劇場公開の両形態で作品を作るとなると、届け先が想定しづらくなるのかな?と思ったのですが……。


武:僕は監督として、いつも「全世界に届ける」と思ってやっていますね。映画ってそういうものだと思うんです。あんまりドメスティックなところだけにとどめて、そういう見せ方にしちゃうと、よその国で全く理解されなくなっちゃうから。


僕は普段あんまり連ドラをやらないし、自分でもほとんど観たことがないから、「ドラマの作り方」が分からない。今回も映画の感覚で作ったのですが、Netflixで『全裸監督』(19)をやったことで、世界中の人のリアクションを得られた経験は大きかったですね。この作品を通して思ったのは、「やっぱりこれでいいんだよ!」ということです。



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