実写をトレースするロトスコープ
Q:最初は実写畑だったとのことですが、そこからアニメーションに移行されたのは、何かきっかけがあったのでしょうか。
岩井澤:自主でいくつか実写も撮ったのですが、なかなかうまく出来ませんでした。周りの同年代は、実写で面白い作品を作っている人がいっぱいいて、このまま実写をやっても勝負できないなって思ったんです。それで、他とは違うテイストで勝負した方がいいなと思い、アニメを始めてみました。今回の『音楽』もそうですが、「ちょっとやってみようかな」ぐらいの軽いきっかけでした。
Q:今回は、最初に実写を撮ってそれをトレースするという、ロトスコープの手法を採用されていますよね。7年前の最初の段階で全部撮影されたのですか?
岩井澤:そうですね。ある程度は最初に撮ったのですが、どうしても全部撮りきれなくて、途中で追加撮影もしました。撮影後は、まず実写のまま編集をする。そこから、毎秒30フレームのコマを1/3くらいに落として作画用に調節していくんです。そうやって枚数を絞った後、それを元に作画していきました。
Q:どこで撮影されたのですか。
岩井澤:市の公共施設の広い会議室を借りたりして、そこで撮影していました。利用料がとにかく安いんですよ。学校のシーンは、撮影でよく使われるような学校(廃校)で撮影しましたね。
(C)大橋裕之 ロックンロール・マウンテン Tip Top
Q:背景はトレースというよりも一からの手描きに見えました。
岩井澤:キャラクターはフォトショップで着彩していますが、背景は全部手で塗っています。
Q:それも時間がかかりそうですね…。7年もやっていると、途中で脚本や演出を変えたくなったことはないのでしょうか。とはいえ、アニメーションなのでそう簡単には変えれないと思いますが。
岩井澤:原作がベースにあるので、そこはある程度崩さないようにしていました。技術的にどうしても出来ないような演出は削ぎ落としましたが、そんなに大きくは変えていないですね。
Q:カメラワークも印象的でした。フェスのシーンなどはカメラが動き回っていますが、全て撮ったままなのですか。
岩井澤:そうですね。特にライブシーンは臨場感を入れたかったので、カメラマンに自由に撮ってもらったものを編集しています。いわゆるライブ映像を作る感覚でしたね。
Q:アニメならではの面白さはあるのですが、実写で見ても面白い気がしました。
岩井澤:もし実写だったら、そんなに目立ったものにはならなかったと思いますね。アニメになった瞬間に、今までになかったものになるので、そこが大きいと思います。