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『ジョゼと虎と魚たち』アニメ映画化の“挑戦”。タムラコータロー監督、かく語りき【Director's Interview Vol.101】

『ジョゼと虎と魚たち』アニメ映画化の“挑戦”。タムラコータロー監督、かく語りき【Director's Interview Vol.101】

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ゼロ年代の日本映画の傑作として、絶対的な地位を確立している『ジョゼと虎と魚たち』(03)。その原作となる田辺聖子氏の小説を、オリジナル展開を織り交ぜてアニメーション映画化する。「いったいどんな物語になるのか?」と思った方も、多かったことだろう。


監督は、『おおかみこどもの雨と雪』(12)助監督や『ノラガミ』シリーズの監督、『文豪ストレイドッグス』のOP映像を手掛けたタムラコータロー。脚本は恋愛ドラマの名手で、『滑走路』(20)も手掛けた桑村さや香、キャラクター原案は『荒ぶる季節の乙女どもよ。』の絵本奈央が担当。アニメーション制作は、『僕のヒーローアカデミア』や『ゴジラ』のTVアニメ化で話題を集める人気スタジオ、ボンズ。


才気あふれるメンバーによって作り上げられたアニメーション映画『ジョゼと虎と魚たち』(12月25日公開)は、原作のエッセンスはしっかりと受け継ぎつつも、実にドラマティックでエモーショナルなラブストーリーへと生まれ変わった。陶酔させられるほどの鮮やかな色彩表現や、緻密な描き込み、美麗な“動き”の表現など、どこを切っても、ハイクオリティな作品となっている。



©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project


車いすの女性・ジョゼ(清原果耶)と運命的な出会いを果たした大学生・恒夫(中川大志)。口が悪くワガママなジョゼに振り回されながらも、恒夫は彼女の天真爛漫な魅力に惹かれていく。そしてジョゼも、恒夫の優しさに包まれ、“外の世界”に飛び出す勇気を持ち始める。


新型コロナウイルスの影響で、「外に出る怖さ」と「人のぬくもり」を同時に痛感した2020年。図らずも本作には、時代と合致したテーマが優しく、真摯に息づいている。しかし、この愛すべき一作を作り上げたタムラ監督は、ロジカルな知性派だった。


「プロデューサーが用意してくれた小説を片っ端から読んでいくなかで、ピンと来たのが『ジョゼと虎と魚たち』だった」という彼の理路整然とした語りからは、確固たる作劇術と、アニメ版独自の明確な“狙い”が見えてくる――。


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『新世紀エヴァンゲリオン』を観てアニメ制作に興味



Q:『ジョゼと虎と魚たち』、非常にイマジネーション豊かで、心温まる作品でした。


タムラ:ありがとうございます!


Q:タムラ監督は、どのような作品から影響を受けて、アニメ業界を目指されたのでしょう?


タムラ:うちはNHKばっかり流れている家庭だったんですよ。そのためNHK教育で放送されているアニメは大概観ていたのですが、その中でも『 ヤダモン』(92~93)という作品に惹かれました。


これが、子ども向けの枠で放送されているのに、後半どんどん子ども向けとは思えないハードな話になっていくんですよ(笑)。最初は楽しい魔女の話だったのが、後半に行くにしたがってシリアス度が増していき、「これ、NHK教育で流していいの?」というものすごくヘビーな展開になっていく。それを観ているうちに「アニメーションって面白いな」、と気になってきたのが最初ですね。


ただそのころはまだ、アニメーションの詳しいことはわかっていませんでした。それが小学6年生か中学1年生くらい。その後『新世紀エヴァンゲリオン』(95~96)が出てきてクリエイターがフィーチャーされるようになり、「アニメーションの作り手になる道もあるんだな」ということがはっきり分かったんです。



©2020 Seiko Tanabe/ KADOKAWA/ Josee Project


Q:時代の変化に呼応して、夢が明確化していったのですね。


タムラ:ただ、当時はまだ「目指すべきはアニメ監督だ!」というわけではなかったですね。僕の友だちもそうでしたが、子どもってとりあえず「将来の夢は漫画家」って書くじゃないですか。「楽しいことして毎日お金稼げたら楽だよな」という考えで(笑)。


今でこそ、「なんて軽い考えなんだ!漫画家はすごくヘビーな職業なんだぞ」と身に染みてわかっているのですが、当時はそういうノリで「絵を描くのが楽しいから、そういう仕事をしたいな。何か面白いものを作れたらな」くらいでした。アニメーションを作ること自体にまだリアリティをあんまり感じられなくて、その当時はやっぱり漫画家になりたいなって思っていました。


ただ、高校生になるときにはもう、漫画よりも映像のほうに比重が移っていましたね。音楽と動きで表現される独自の世界が気に入っていたこともありますし、思い返せば頭の中に勝手に映像が流れて、アニメーションで妄想する子どもでもありました。




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